「認知症の検査でするようなテストって、どんなものがあるの?」
「もしかして認知症かも…まずはテストを試してみたいけど、どんな内容になるんだろう」
このようにお考えではないですか?
認知症の検査は、医療的には「神経心理学検査(認知テスト)」と「脳画像検査」と呼ばれる2種類の検査により各々行われます。これらは認知症の診断や重症度をはかる目的で用います。
一般的にテストと言われてイメージされるのは、医師から患者または付き添いの方に質問をして行うタイプの神経心理学検査のテストでしょう。
神経心理学検査の主な認知症テストは、以下の5種類です。
このほかにも認知症には様々なテストがありますが、この記事では信頼できる代表的なテストのみをご紹介していきます。
認知症のテストは、医師によってどれを採用しているかは状況や目的によって異なり、またテストの点数が良くなかったからと言って、必ずしもそれだけを理由に認知症と診断されるわけではありません。
認知症の診断はテストだけでなく、脳画像や実際に対面した印象など、さまざまな情報をもとに総合的に診断されるということは覚えておきましょう。
これらのことを理解していないと、テストを行ったとしても、結果の意味を正しく受け止めらない可能性があります。
そこでこの記事では、認知症のテストの基礎的な情報を中心に、以下の内容について詳しく解説します。
この記事のポイント |
認知症の評価に用いる2種類の検査一般的に用いられる認知症の神経心理学検査のテスト5種類自宅で簡易的に認知症チェックができるサイトとアプリ |
この記事をお読みいただくことで、認知症のテストでどのようなことが行われるか、事前にイメージできるようになるでしょう。ぜひこの記事を参考に、認知症のテストを受けるかどうかを検討していただければ幸いです。
1.認知症の評価は主に2種類の検査により行われる
冒頭でも解説した通り、認知症のテストは主に以下の2種類の検査の中で行われます。まずはそれぞれがどんなものか見てみましょう。
神経心理学検査
神経心理学検査とは、認知機能が正常に働いているかどうかを判断するためのテストです。
神経心理学検査は、「ただの物忘れ」とされるような正常な状態や一般的な老化なのか、それとも「認知症」なのかを判断するために用いられます。
一般的には、口頭での簡単な質問に回答してもらうことで認知症かどうかを判断します。その他にも、紙とペンを用いて簡単な図形を描いてもらって判断するといった方法もあります。
この認知機能を評価するテストは、認知症が疑われる本人が受ける場合だけでなく、家族など身近な人が受けるものもあります。
また認知症かどうかをスクリーニングするためのテストと、認知症の重症度を測るためのテストは異なるため、テストの種類は多岐に渡るのです。
具体的な認知テストの種類や内容に関しては、「2.一般的に用いられる認知テスト」で解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
脳画像の評価
前章で紹介した神経心理学検査だけでなく、脳の形を調べる脳画像診断の評価も認知症の判断に用いられます。脳画像の評価は、主に以下の方法で行われることが一般的です。
検査名 | 概要 |
CT | X線を使ってコンピューター断層撮影を行う検査。頭部の外傷や脳出血などを診断できる。 |
MRI | 電磁気による画像検査。認知症の発症時期も推測可能。 |
SPECT | 微量の放射性物質を含む検査薬を投与して脳血流量や動きをみる検査。 |
脳画像の評価は、認知症でよくみられる物忘れなどの初期症状とは別の、よく似た症状の別の病気の可能性も考えながら進めることになります。
たとえば認知症でなく、
- 慢性硬膜下血腫
- 脳腫瘍
- 頭部外傷
- 脳出血
- 脳梗塞
これらの病気である可能性もあるのです。
脳内の状態を見て、総合的に認知症かどうかを判断するために脳画像の評価が用いられる、ということをおさえておきましょう。
一般的に用いられる認知症のテスト(神経心理学検査)5つ
それではここからは、一般的に「認知症のテストを行ってみたい」といった時にイメージされる、神経心理学検査のテスト内容について詳しく解説します。
こちらは基本的には、自宅でも行える認知症のテストとなります。
なお、認知機能を評価するテストには国内外合わせてさまざまなものがありますが、ここでは国内で一般的に用いられているテストを解説していきます。
それぞれ、見ていきましょう。
認知症かどうかを評価する認知テスト
まずは、認知症かどうかを判断する認知テスト(スクリーニング検査)について解説します。
国内で一般的に用いられる検査として、ここでは以下の3種類について解説します。
それぞれ見ていきましょう。
改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
テスト名 | 改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R) |
検査対象 | 知能 |
テストの概要 | 日本国内で一般的に用いられている認知テスト。10~15分ほどで9つの設問に口頭で回答する。 |
評価項目 | 見当識、計算、記憶に関する質問、言葉の流動性 |
採点基準 | 30点満点で20点以下だと認知症の疑いが強い |
改訂長谷川式簡易知能評価スケールは、1974年に精神科医の長谷川和夫氏が開発し、全国的に普及した認知機能テストです。一般的には「長谷川式」と呼ばれることもあります。
※1991年に改定されたため、現在の正式名称は「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」です。
長谷川式は後述するMMSEとも似ており、見当識、計算、記憶に関する質問、言葉の流動性を問うものなど、身近に感じられる質問で構成されています。メジャーなテストであるため、自宅で簡易的に行われることも多いです。
ただしその日の体調によっても正答率は下がることもあるため、このテストだけで認知症かどうか判断することはできないということに注意しましょう。
ミニメンタルステート検査(MMSE)
テスト名 | ミニメンタルステート検査(MMSE検査) |
検査対象 | 知能 |
テストの概要 | 国際的に広く用いられている認知機能テスト。10~15分で11個の設問を10秒以内に口頭で回答する。 |
チェック項目 | 時間と場所の見当識、即時想起、注意と計算能力、短期記憶、言語的能力、空間認知 |
採点基準 | 30点満点で23点以下だと認知症の疑いが強い |
ミニメンタルステート検査はMMSEとも呼ばれています。
計算や図形の質問、記憶力を問われたり、または図形の模写をさせるといった設問が用意されており、その回答で認知機能を評価します。長谷川式と似た内容の設問がありますが、これらは長谷川式よりもやや難しめの内容と言えるでしょう。
たとえば「10秒以内に答える」と決められている問題は、患者がプレッシャーを感じやすいという側面もあることに注意して、必要であれば付き添いのサポートを行いましょう。
時計描画テスト(CDT)
テスト名 | 時計描画テスト(CDT) |
検査対象 | 前頭葉機能・遂行機能 |
テストの概要 | 円と針、数字、中心点を描く検査。長谷川式と併せて実施することで総合的な診断が可能となる。 |
採点基準 | 描きあがった描画で医師が診断する |
時計描画テストは、長谷川式と併せて用いられることの多いテストです。具体的な時刻を伝え、B5程の紙に円と針、数字、中心点を描かせるといった内容となります。
このテストにより、前頭葉機能や遂行機能の障害の程度をはかることができます。
認知症患者の場合は円を綺麗に描けない、数字を丸く配列できない、針を複数描いてしまうといったことが起こります。この完成した描画を見て、医師が評価します。
口頭式のテストに比べてリラックスして行えるため、認知症を早期発見しやすい方法として積極的に取り入れられています。
認知症の重症度を測る認知テスト
ここでは、認知症の重症度を測る認知テストとして以下の2種類を解説します。
それぞれ見ていきましょう。
CDR
テスト名 | CDR(Clinical Dementia Rating) |
テストの概要 | 「記憶」「見当識」「判断力・問題解決」「社会適応」「家庭状況・興味・関心」「介護状況」6つの項目について評価する。医師の診察上の所見や家族・周囲の人からの情報に基づいて評価する。具体的なテストは行なわず、評価指標として活用される |
採点基準 | 「健康」「認知症の疑い」「軽度認知症」「中等度認知症」「高度認知症」のいずれかに評定 |
CDR(Clinical Dementia Rating)は、認知症の重症度を評価するためのスケールとして活用されます。こちらは既に認知症であると診断されている人の障害の程度などを把握するために使われるテストです。
「記憶」「見当識」「判断力・問題解決」「社会適応」「家庭状況・興味・関心」「介護状況」の6つの項目については、診察上の所見や家族の情報に基づいて評価します。
認知症かどうかを判断するためのテストと違い、CDRのために患者さん本人が何らかのテストを受けるわけではないため、患者さんやご家族が特に意識したり準備する必要はありません。
N式老年用精神状態尺度(NMスケール)
テスト名 | N式老年用精神状態尺度(NMスケール) |
テストの概要 | 「家事・身辺整理」「関心・意欲・交流」「会話」「記銘・記憶」「見当識」の5項目に対して評価し、採点を行う。患者の日常生活の行動観察を通して評価する。 |
採点基準 | 50点満点48点以上…正常43~47点…境界31~42点…軽度17~30点…中等度16点以下…重度 |
N式老年用精神状態尺度(NMスケール)は患者さん本人との意思疎通(やりとり)を必要とせず、患者さんの日常生活の行動観察によって評価を行うタイプの指標です。
長谷川式を代表とする認知症かどうかを調べる検査は口頭テストとなるため、認知症が進行しており意思疎通が難しい患者には対応できません。そこで、このNMスケールを活用することで意思疎通を行うことなく状態を評価できるのです。
ただし、NMスケールは医師などの評価者の知識や経験によって精度が異なり、一定の評価をしにくいといった点が問題点としては挙げられます。
そのため、このテスト行うことが必要になったときは、信頼できる担当者による結果なのかも検討するようにしましょう。
自宅で簡易的に認知症チェックができるツールを紹介
認知症かもしれないと思ったら、検査に行ってテストを受ける前に、自宅で簡単にできるチェックができるツールもあると安心ですよね。ここでは、以下のサイトとアプリを2つ紹介します。
※これらのチェックは簡易的なものであり、これだけで正確に認知症であるかは判断できません。
テストを受ける方のコンディションによっては、点数が低く(認知症の可能性が高く)評価されることもあります。不安があれば、医療機関で正式な検査を受けることをおすすめします。
東京都福祉保健局の認知症チェックリスト(サイト)
自分が認知症であるか簡易的にチェックされたい方は、東京都福祉保健局が公開しているチェックリストが便利です。
12問の質問からなっており、誰でも簡単にチェックできます。本人がやりたがらない場合には家族の方でも回答可能です。ただし、2-1-1章で解説した長谷川式同様、この質問だけで認知症かどうかを正確に判断することはできません。
本人の体調によって点数が低く評価されてしまうこともありますし、認知症によく似た別の病気である可能性もあります。少しでも気になる場合には医療機関を受診することをおすすめします。
Moffワスレナグサ(アプリ)
自宅で簡単に長谷川式のチェックを行いたいのであれば、アプリの利用もおすすめです。
「Moffワスレナグサ」であれば長谷川式スケールを用いたチェックを誰でもすぐに行えるでしょう。
アプリでは長谷川式スケールに準じた質問事項が表示されます。テストを行う際には、家族など身近な人に出題をしてもらい、本人がそれに返答するという方法を取りましょう。
【認知症テスト Moffワスレナグサ(HDS-R)】のアプリはこちら
認知症を疑ったら医療機関で精密な検査を
これまで認知症のテストについて便利なツールも合わせて紹介していきましたが、原則として「認知症かも?」と少しでも疑う面があるなら、医療機関で精密な検査を行うことをおすすめします。
認知症は認知テストのみで診断されるわけではなく、問診や脳画像によって総合的に判断されます。体調などによって実際よりも点数が低くなることもありますし、認知症だと思って検査してみたら、実は別の脳の病気だった、といったこともよくあります。
認知症によく似た症状ではあるけれども別の病気だった場合、早期発見することで改善したり完治したりする可能性がありますし、反対に、タイミングによっては手遅れになる可能性もあるのです。
そのため「認知症かも?」との疑いがある場合には、医療機関にご相談ください。
まとめ
以上この記事では、認知症の中でも特に認知テストの基礎的な情報を中心に、以下の内容について詳しく解説しました。
この記事のポイント |
認知症の評価に用いられる2種類の検査一般的に用いられる認知症のテスト5種類自宅で簡易的に認知症チェックができるサイトとアプリ認知症を疑ったらテストだけでなく医療機関で精密な検査を行うことが推奨される |
この記事をお読みいただくことで、認知症における認知テストでどのようなことが行われるかの基礎知識をご理解いただけたかと思います。ぜひこの記事を参考に、認知症のテストを受けるかどうかを検討していただければ幸いです。