認知症の検査内容とは? 検査の流れと事前に把握しておくべきことを解説します

認知症の検査内容とは? 検査の流れと事前に把握しておくべきことを解説します
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このようにお悩みではないですか? 

前提として、今の段階でもしも「認知症かも…?」という疑いを持っている方は、何よりもまず認知症検査を受けましょう。認知症は早期に発見することで進行を遅らせることや、改善できる症状があります。

また、認知症ではなかったとしても、よく似た別の病気である可能性もあるため、まずは早急に検査を行うことが求められるのです。

認知症診断のためには様々な検査を行いますが、その流れは以下の通りとなります。

認知症で特徴的な検査は、「神経心理学検査(認知テスト)」とMRIやCT等を使った「脳画像検査」です。特に、簡単な口頭質問で行う「認知テスト」が活用されることをご存じの方は多いのではないでしょうか。

しかし実は、認知症の診断では認知テストだけが重視されるわけではありません。脳画像検査や問診など、さまざまな検査によって総合的に判断されます。

そこでこの記事では、認知症検査の流れや、認知症を疑った場合に相談すべき機関など、以下の内容を詳しく網羅的に解説します。

この記事のポイント
認知症を疑ったらすぐに検査を受けよう認知症で相談すべき診療科や機関認知症検査の流れ認知症検査にかかる費用の目安本人が認知症検査を嫌がる場合の対処法認知症検査を受ける際に確認すべき3つのポイント

この記事をお読みいただくことで、認知症検査の流れや早期発見の重要性をご理解いただけるかと思います。ぜひこの記事を参考にしていただき、認知症検査を前向きに検討していただければ幸いです。

目次

認知症を疑ったらすぐに検査を受けるべき理由

冒頭でも解説した通り、認知症を疑ったら何よりもまず検査を受けることを優先してください。ここではまず大前提として、なぜ認知症を疑った場合に早期に検査をするべきなのかを解説します。

初期から対応することで進行を遅らせることができる

認知症は初期の段階で対応することで進行を遅らせることが可能となるため、なるべく早くに検査を受ける必要があります。

一般的に「認知症の症状」と認識されているものの中には、神経細胞の破壊によって直接的に引き起こされている「中核症状」以の他に、中核症状とともに生活環境や本人の性格、ストレスなどによって引き起こされる「周辺症状」があります。

以下は、中核症状と周辺症状の関係です。

例えば認知症の症状としてよく知られるものとしては、以下のようなものがありますよね。

  • 徘徊
  • 妄想
  • 暴力
  • 暴言 など

これらは「周辺症状」と呼ばれており、治療やリハビリによって大幅に改善する可能性がある症状です。早めの対処が改善のカギとなりますので、検査を受けて早期発見に努めることは重要です。

また認知症の検査を受けると「軽度認知障害(MCI)」と診断されることもあります。MCIは認知症の前段階のことで、正常な状態と認知症の中間の状態を指します。このMCIの段階で適切な対策を行うことができれば、認知症に進行せずに正常な状態に戻る可能性もあるのです。

以上のように、認知症は早い段階で検査を受けて対応すると治療方針や対応策を広くとることができるため、少しでも疑う場合は検査を受けることが望ましいです。

認知症でない別の重大な病気の可能性がある

また認知症の早期発見が重要な大きな理由としては、早期発見することで別の重大な病気を治療できる可能性があることが挙げられます。

たとえば、認知症と似た初期症状を呈する病気に「慢性硬膜下血腫」という病気があります。この慢性硬膜下血腫の症状のひとつに、認知障害や歩行障害といった、認知症と似た症状が現れることがあるのです。

同様に、「特発性正常圧水頭症」も認知症状や歩行障害が見られる病気です。これらの病気は早期に発見し治療を行えば完治も可能です。

一見して認知症のような症状がみられる際に「年だから」と言って検査を受けないでいると、このような病気に気付けず、手遅れになってしまうことがあるのが重大な問題点です。

いずれの場合でも早めに検査を受けて鑑別診断(可能性のある他の病気を比較しながらデータなどを用いて合理的に特定する診断)することが重要です。

認知症の検査を受けられる診療科と機関

この章では、認知症で検査を受けたいとしても「どこに行けばいいのか?」が分からない人のために、認知症の検査を受けられる診療科と機関について詳しく解説します。

認知症を専門とする診療科

まずは、認知症を専門とする診療科に相談してみましょう。認知症を専門とするのは以下のような診療科です。

  • 脳神経内科
  • 脳神経外科
  • ものわすれ外来
  • 認知症外来
  • 老年病科
  • 精神科
  • 心療内科

それぞれの診療科で本質的な役割は異なりますが、認知症の検査のアプローチはどの診療科でも概ね共通です。

初期の段階で受診者が「どこを受けるのか適切か?」とあまり悩む必要はありません。上記のいずれかを受診すれば、基本的には問題ないでしょう。

ただし、クリニックや医療機関によってはCTやMRIを扱っていないこともあります。画像診断が必要な場合は別の医療機関を紹介されることもあるので、初めから画像診断を行っている医療機関に絞って相談するのも確実な方法でしょう。

なお、もしもこれらの医療機関が近くにない場合には、かかりつけ医に相談してみるのもおすすめです。

かかりつけ医は病歴など状況に応じて適切な医療機関を紹介してくれるので、迷うようであれば、まずはお住まいの地域のかかりつけ医に相談してみてください。

認知症をケアするための役割を担う人や機関

実は認知症においては、一般的に「病院」「クリニック」と言われる医療機関の他に、認知症をケアするための役割を担う人や機関があります。

認知症サポート医認知症の方や疑いのある方と地域の医療機関との橋渡しをする案内役を担う医師
認知症専門疾患医療センター保険医療や介護機関と連携し、専門医療相談や診断、周辺症状への対応を行う機関
老人性認知症専門病棟老人性認知症疾患療養病棟認知症によって自宅や施設での生活が難しくなった方のための専門病棟

こういったところでも、認知症の検査を受けられる可能性があります。しかし、認知症は日常生活に支障をきたす病気ではあるものの、診断や治療が難しい側面があります。

原因がはっきりしないことも多く、そもそもどんな医療機関を受診して検査を受けるべきか、認知症の家族に対してどのように接すればいいのかなど、さまざまな部分での悩みも発生しやすいですよね。

そうした悩みを、社会全体でケアしていくために作られたのが上記のような機関です。

実際に受けられる検査の内容や対応方法は自治体や機関によって異なりますが、悩みを持っている方は検査以外のことも相談できるため、今の段階の選択肢として検討してもよいでしょう。

地域包括支援センターも活用してみよう!

近くに適切な診療科やクリニックがないなどで、受診すべき診療科が分からない場合には「地域包括支援センター」を活用してみましょう。
地域包括支援センターとは、高齢者の暮らしを地域でサポートするための拠点のことです。

地域包括支援センターには相談窓口が設置されており、介護や医療など高齢者の生活に関わる様々な相談を受け付けています。

センターでは自治体が医療機関と連携を取っているため、相談すれば適切な医療機関を相談してくれます。

認知症検査の流れ3ステップ

それではここからは、認知症検査の流れについて解説します。認知症は基本的に、以下の流れで行われます。

順番に見ていきましょう。

問診

まず最初に「問診」が行われます。問診では本人や付き添いの方が医師と面談し、本人の状況について伝えます。またこのときに病歴や現在治療中の病気等についても詳しく伝えます。

認知症検査としては認知テストや脳画像検査が行われますが、実は診断において特に重要なのは問診です。医師は本人と直接会話することで、どのような状況にあるのかを見極めていくのです。

具体的には、以下のような内容が聞かれることが一般的です。

  • どのような症状があるか
  • 症状にいつ気づいたか
  • 日常生活にどんな支障があるか
  • 病歴や現在飲んでいる薬
  • 症状によって家族がどんなことで困っているか
  • 睡眠や食欲など、本人の体調面 など

認知症の場合、こうした細かな質問には、本人がすべて正確に答えることが困難な場合があります。

その場合は付き添いの家族が答えることになるので、付き添いの準備をしておきましょう。なるべく正確に伝えられるよう、あらかじめ情報を整理しておくとスムーズです。

身体検査

問診の次に身体検査が行われます。主に以下のような内容の検査が行われます。

  • 血液検査
  • 心電図検査
  • 感染症検査
  • レントゲン検査 など

これらは、認知症ではない他の病気による症状の可能性も考慮して行われるため、通常の病院受診で受ける検査と特に変わりはありません

認知症検査

認知症検査では、主に「神経心理学検査」と「脳画像検査」の2つの検査が行われます。ここではそれらについて解説します。

神経心理学検査

神経心理学検査は、簡単な質問や簡単な作業を行うことで診断する検査方法です。

認知症を疑う本人に簡単なテストを受けてもらい、一定の点数に満たなかった場合に認知症の疑いがあると判断されます。

検査の種類には、以下のようなものがあります。

検査名概要
改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)9つの設問から成り、認知症の疑いがあるかどうかを評価する。全て口頭で回答する。
ミニメンタルステート検査(MMSE)11項目のテストを行い、認知症の疑いがあるかどうかを評価する。口頭、記述、描画によって回答する。
時計描画テスト(CDT)時刻を示して、時計を正確に書けるかどうかを見るテスト。
ABC認知症スケール(ABC-DS)本人ではなく介護者に日常生活に関する質問を行い、評価する。
Mini-Cog3つの単語を覚えさせて思い出させる、時計を描かせるなどのテスト。
MoCA(Montreal Cognitive Assessment)視空間・遂行機能、命名、記憶、注意、復唱、語想起、抽象概念、遅延再生、見当識の認知機能を対面で評価する検査。

どれもいくつかの簡単なテストによって構成されているものですが、注意点として、これらのテストで得点が低かったからと言ってただちに認知症であるとは断定できないという点には気をつけましょう。

最終的には、その他の様々な要素もみながら、医師が総合的に診断することとなります。上記の検査の具体的な内容について、より詳しくは【認知症テスト】の記事でも解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

【認知症テストの記事】はこちら

脳画像検査

脳画像検査とは、脳の画像を撮影して認知症を診断する方法です。

脳画像検査の種類は以下となります。

検査名概要
CTX線を使ってコンピューター断層撮影を行う検査。頭部の外傷や脳出血などを診断できる。
MRI電磁気による画像検査。認知症の発症時期も推測可能。
SPECT微量の放射性物質を含む検査薬を投与して脳血流量や動きをみる検査。

場合によってはこの脳画像検査によって検査費用が高額となる可能性があるため、事前に検査内容は医師や担当者から十分な説明を受けて、納得して検査を受けるようにしましょう。

診断

これまでに行った検査を参考に、医師が総合的にみて認知症であるか、またはそのほかの病気であるか診断します。本人に直接告知する場合もあれば、家族が聞いてから本人に伝えるかどうか判断するケースもあります。

いずれの場合も、認知症であることを伝える場合には本人の負担にならない配慮をすることが大切です。

認知症検査にかかる費用の目安相場は数百円〜3万円

認知症の検査費用は内容によって異なりますが、3割負担の場合は、相場は数百円から3万円です。

前提として、前章では認知症検査の一般的に用いられる内容について広く解説しましたが、実際にどのような検査を行うかは医師の判断によって異なります。

そのため、費用の目安にも幅があるのです。

検査の種類費用(保険適用3割負担の場合)
神経心理学検査(認知機能検査)250~850円
CT5,000円~1万円
MRI5,000円~1万円
SPECT2万5,000円~3万円

例えば認知症検査の中でも、神経心理学検査は比較的安価に受けることができます。

その多くは3割負担の場合、1000円以下で受けられるでしょう。しかし、脳画像検査の方が費用が多くかかるため、結果として5,000円~1万円前後の出費となる可能性があります。

また、認知症検査の中で最も費用が高くなるのはSPECT検査です。SPECT検査の場合、3割負担でも3万円ほどはかかると見た方が良いでしょう。

どのような検査を行うかは医療機関や医師によって異なります。組み合わせについては十分な説明を受けてから検査を受けるようにしましょう。

本人が認知症検査を嫌がる場合に試すべき対処法

ここからは、実際に認知症検査を受ける場合にハードルとなることを解説していきます。

最も注意するべきことは、本人が認知症検査を嫌がる可能性があるということです。しかし前述した通り、本人が嫌がるからといって検査を受けさせないと、重大な病気を放置する結果につながるかもしれません。

本人が認知症検査を嫌がる場合には、以下のことを試してみるといいでしょう。

  • まずはかかりつけ医に相談する
  • 「健康診断の延長」と言って受けさせる
  • 「おかしいから医者に行くべき!」など本人のプライドを傷つける言い方をしない
  • 「高齢になると皆受けている」などと伝える
  • 認知症以外の重大な病気の可能性を伝える

極論を言えば、検査を受ける際に本人が自分が認知症の可能性があることを認識する必要はありません。

検査を嫌がる(または嫌がる可能性がある)場合には「健康診断の延長」と言ったり、「高齢になると皆受ける」などと言ったりして検査を受けてもらう方法も有効なのです。

ただし注意すべきは「認知症の検査ではない」などと嘘を言って無理に受けさせてはいけないという点です。家族間の信頼関係にヒビが入ってしまう可能性もありますし、本人のプライドを傷つけてしまう可能性もあります。

焦って無理強いして本人に大きなストレスを与えないよう、まずは自然に検査を受けてもらえるように精神的なケアを行いながら促すことが大切です。

家族でできることを十分に把握した上で、状況に応じてかかりつけ医や地域相談に繋げるようにしましょう。

認知症検査を受ける際に確認すべき3つのポイント

ここからは、実際に認知症検査を受ける場合に本人や付き添いの方が注意しておくべきことを解説します。ここでは、以下の3点を見ていきましょう。

それぞれについて解説します。

診察前に普段の様子をまとめておこう

認知症の検査を受ける場合には、診察前に普段の様子をまとめておくことをおすすめします。ここまでに解説した通り、認知症検査を受ける際には、まず本人の状態を正確に医師に伝える必要があるからです。

診察では、例えば以下のような内容を聞かれることが一般的です。

  • どのような症状があるか
  • 症状にいつ気づいたか
  • 日常生活にどんな支障があるか
  • 病歴や現在飲んでいる薬
  • 症状によって家族がどんなことで困っているか
  • 睡眠や食欲など、本人の体調面 など

場合によってはかなり具体的に聞かれることもありますので、こうした情報を事前にまとめておくと良いでしょう。

また場合によっては、本人がこれらの質問全てに詳細に応えることが難しい場合もあります。そうしたことも想定しながら、付き添いの方も本人の普段の様子を整理しておくと良いでしょう。

特に病歴や薬などを事前に把握しておくと、問診の際スムーズです。

認知症診断を聞く時はなるべく付き添いをつけよう

認知症であるとの診断を聞く時には、できるだけ家族など付き添いの方が一緒に聞くことをおすすめします。ひとりで診断結果を聞く場合、ショックが大きくて医師からの言葉を聞き逃してしまうことも考えられます。

認知症の診断結果を、付き添いの方と一緒に聞くことは一般的なことです。どのような結果であっても一人ではなく、なるべく付き添いの方と一緒に聞くようにしましょう。

また認知症であることにショックを受ける可能性が高いと分かっているのであれば、事前に付き添いの方が結果を聞き、折を見て本人に伝えるという方法を取ることもあります。

告知すること自体は決して悪いことではありませんが、その方法は吟味が必要です。本人の性格や状況をみながら、精神的なショックをなるべく受けない方法を取ることができるのであれば、それがベストです。

診断に納得できなければセカンドオピニオンを検討しよう

もしも診断結果に納得ができなければ、セカンドオピニオンも検討しましょう。認知症の診断は難しく、必ずしも結果が確実であると言い切れない側面があります。認知症ではないと診断されても、実際には軽度の認知症であるということもあります。

また、認知症の中でもカテゴリーに誤りがあったり、認知症以外の病気と混同してしまったりといったこともまれにあります。こうした間違った診断のもと治療を続けると効果がないばかりか、他の病気を見逃してしまうこともあり得るのです。

そうした状況を防ぐためにも、診断に疑問が残ったり納得できなかったりする場合にはセカンドオピニオンを受けることを検討しましょう。

中には「セカンドオピニオンを受けると言いづらい」という方もいるかもしれません。しかし、本人や家族が納得することが一番重要です。

近年では、かかっている医療機関に「セカンドオピニオンを受ける」旨を伝えると紹介してくれることもあるようです。

まとめ

この記事では、認知症検査の流れや、認知症を疑った場合に相談すべき機関など、以下の内容を詳しく解説してきました。

この記事のポイント
認知症を疑ったらすぐに検査を受けよう認知症で相談すべき診療科や機関認知症検査の流れ認知症検査にかかる費用の目安本人が認知症検査を嫌がる場合の対処法認知症検査を受ける際に確認すべき3つのポイント

この記事をお読みいただくことで、認知症検査の流れや早期発見の重要性をご理解いただけたかと思います。ぜひこの記事を参考にしていただき、認知症検査を前向きに検討していただければ幸いです。

認知症の検査内容とは? 検査の流れと事前に把握しておくべきことを解説します

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この記事を書いた人

ブレインヘルスケア・オンライン編集部では認知症や様々な脳疾患領域に関連する情報を発信していきます。「ブレインヘルスケア」という考え方を通して脳の健康について学べるメディアを目指しています。

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