認知症の中核症状とは? 主な5種類と周辺症状との本質的な違いも解説

認知症の中核症状とは? 主な5種類と周辺症状との本質的な違いも解説
  • URLをコピーしました!

「認知症の中核症状にはどんなものがあるのかな?」
「認知症の症状にはいろいろあるけど、中核症状があるとまずいのかな?」

このようにお悩みではないですか?

認知症の中核症状とは、脳細胞が破壊された場合に起こる認知機能障害です。

具体的には、以下のような症状が中核症状と診断されます。

中核症状と対になる言葉に「周辺症状」というものがあります。

周辺症状は、環境や感情などと中核症状との相互作用によって生じる症状や障害のことを表しています。イメージとしては、以下のようなものです。

中核症状は認知症の核となる症状です。認知症の種類によっても中核症状の現れ方は異なります。どのような症状が中核症状として現れるかを把握しておくと、対応がスムーズにいき、治療の方針が固まりやすくなります。

そこでこの記事では、認知症の中核症状の基礎的な知識を中心に、以下の内容について詳しく解説していきます。

この記事のポイント
認知症の中核症状の種類中核症状と周辺症状の本質的な違い認知症の種類ごとの中核症状と治療法認知症は早期発見・対策が重要

この記事をお読みいただくことで、認知症の中核症状についての概要をご理解いただけると思います。ぜひこの記事を参考にしていただき、認知症の対応に役立てていただければ幸いです。

目次

1.認知症の5種類の中核症状

それではまず、認知症の中核症状の種類について詳しく解説します。

中核症状には以下のような5種類の症状が挙げられます。

それぞれについて解説しましょう。

1-1.記憶障害

認知症の中核症状のなかでももっとも現れやすいのが、記憶障害です。

以下が、一般的な認知症の記憶障害の症状です。

  • 何度も同じことを聞く
  • 人の名前を思い出せない
  • ものをしまい忘れてしまう
  • どこにしまったのかを忘れてしまう
  • 薬を飲み忘れてしまう
  • 新しいことを覚えられない
  • 約束を覚えられない

認知症の初期段階においては、比較的新しいことを記憶することが困難となります。そのため、「さっき食べたもの」に関しては忘れてしまっても「子どもの頃の記憶」は覚えているといったことがあるのです。

一方で、認知症の記憶障害とよく誤解されるものに「物忘れ」があります。物忘れは加齢などによって引き起こされるものであり、認知症とは仕組みが異なります。

例えば認知症の症状の場合、

  • 体験をまるごと忘れている
  • 「言葉の一部」などヒントを聞いても思い出せない
  • 物忘れの自覚がない

といった部分が、単なる物忘れとは大きく異なります。

認知症の記憶障害の場合、脳細胞が破壊されて引き起こされる症状であるため改善することは難しいのですが、リハビリを行うことでその進行を抑制することは可能です。

1-2.見当識障害

見当識障害とは、「時間」や「場所」が分からなくなるという障害です。

以下が、一般的な見当識障害の症状です。

  • 今日の日にちや曜日が分からない
  • 今自分がどこにいるのか分からない
  • 昼と夜の区別がつかない
  • 昼寝をした後に自分がどこにいるのか分からない
  • いつもの帰り道で迷う

見当識障害では、時間の認識があやふやになるため、予定通りに計画を実行することが難しくなります。自分がどこにいるのか分からなくなることがあるため、通い慣れた道に迷ってしまうこともあります。

これらは特に認知症の初期の段階から現れやすい症状ですが、状態が良いときには「自分は時間や場所が分からなくなりやすい」と自覚されることもあります。

1-3.理解力・判断力の低下

理解力・判断力の低下も認知症の中核症状としてよく見られます。

以下が、一般的な症状です。

  • 早口の話についていけない
  • 一度に二つ以上のことをできない
  • いつもと違うことが起こると対応できない

認知症の中核症状によって理解力や判断力が低下すると、今まで出来ていた料理ができなくなったり、イレギュラーな出来事に対応するのが難しくなります。

また、理解力が低下することで家電の操作ができなくなったりATMなどの操作で戸惑うこともあります。

理解力や判断力が低下すると、情報を処理するスピードが落ちます。しかしこれは物事を考えられなくなるということではありません時間をかければ結論を出すことも可能であるため、中核症状が出現していても、急かさないことが重要となります。

1-4.実行機能障害

認知症の中核症状における実行機能障害とは、計画的に物事を進めることができなくなる障害です。

  • 計画的に料理ができなくなる
  • 予算内での複数の買い物ができなくなる
  • 薬の管理ができない
  • 電話番号を調べて電話をかけることができない
  • スケジュールを立てて実行できない

物事を計画立てて効率的に実行することが難しくなるため、以上のような行為が出来なくなってしまいます。スーパーでの買い物が上手くできなくなるため、何度も同じ食材を買ってきてしまい冷蔵庫にたまってしまう、といったことが起こります。

ただし、初期段階では「ご飯を炊く」「カレーを作る」といった単発の行為は実行できます。

中核症状においては、実行機能においても「スープを作っている間におかずを作る」のように、同時進行で効率的に作業を行うことが困難になるのです。

1-5.失行・失認・失語

認知症の中核障害では、以下の3つの障害が起こります。

  1. 失行(基本的な行動や動作ができなくなる)
  2. 失認(五感を認知できなくなる)
  3. 失語(言葉をうまく使えなくなる)

1.失行障害は、生活の中でできていた行為ができなくなるといった障害です。

例えば食事をしたり、字を書く、洋服を着る、歯を磨くといった動作が、それを行うための身体機能には問題ないにもかかわらず、できなくなります。

2.失認障害は、五感の働きには問題ないものの、五感に対する認知能力が低下してしまう障害です。

たとえば視覚に問題がないにも関わらず、図形を正確に模写できなくなったり、地図を読めなくなったりします。また、人を見間違えるといった失認障害が現れることもあります。

3.言語障害は、「聞く」「読む」「話す」「書く」といったことが困難になる症状です。

言語障害の中にも種類がさまざまあり、

  • 言葉の意味を理解できないが話すことはできる
  • 言葉の意味は理解できないが流暢に話せない

といった症状が現れます。

「言語障害」というと、言葉の意味ができずに会話ができなくなる、とイメージされる方も多いですが、その限りではありません。実際には、理解ができるものの話したり書いたりすることが困難な場合もあります。

このような3つの失行・失認・失語の障害が、認知症の中核症状です。

2.中核症状と周辺症状の本質的な違いとは

ここからは、認知症の中核症状を理解するために、中核症状と周辺症状の本質的な違いについて解説します。

周辺症状とは中核症状によって引き起こされる二次的な症状のことです。つまり、症状が引き起こされるメカニズム自体が中核症状と周辺症状は異なります。

そのため、中核症状と周辺症状では症状への対応策が異なるのです。それらの違いを理解しておくことで、どの症状のときにどうすればいいのかが明確になります。ここでは、それらの本質的な違いと比較を詳しく解説していきます。

2-1.認知症の周辺症状とは|中核症状が原因となって行動や心理に現れる二次的な症状のこと

認知症の周辺症状とは、中核症状が原因となって行動や心理に現れる二次的な症状のことです。

具体的には、以下のような症状が現れることがあります。

精神症状抑うつ妄想幻覚誤認不眠意欲の低下 など
身体症状徘徊妄想多動収集癖暴力・暴言過食・暴食 など

これらの症状は、認知症の中核症状が要因となって現れます。環境によっても症状の出方は異なり、誰でも必ず周辺症状が出るというものではありません。

また環境や周囲の対応によっては改善したり、軽減したりすることも可能である点は、中核症状とは異なります。

2-2.認知症の周辺症状と中核症状の比較

ここでもう一度、周辺症状と中核症状の比較を見ていきましょう。

認知症は原則として「脳細胞が破壊される→中核症状が現れる→中核症状に呼応して周辺症状が現れる」という順序で進行します。そのため最初から周辺症状が現れるということはありません。基本的には、最初に中核症状が現れます。

そして、最も注目すべき違いは「軽減できるかどうか」という点です。

認知症の中核症状の場合は、脳細胞が破壊されることで認知機能障害が起こります。そのため、治療やリハビリを行ったとしても症状を改善することはできません(抑制することは可能)。

その一方で周辺症状の場合は、環境や心理的要因によって生じる為、適切な対応を行うことで症状を改善したり軽減することが可能です。

たとえば中核症状でよく見られる「何度も同じことを聞く」「約束を忘れてしまう」「買い物を間違えてしまう」といった行動に対して家族や周りの人が怒ったり、咎めたりしたとします。すると本人は混乱しストレスを感じるでしょう。

その結果、鬱状態や妄想、不眠などの周辺症状が発症してしまう、といった流れになることも見過ごせません。

認知症の中核症状は改善できませんが、抑制することは可能です。なるべく早く認知症に気づくことで、初期の段階から中核症状を抑制する方向で対応しましょう。

3.認知症の3種類ごとの中核症状と治療法

認知症の中核症状についての概要が分かったところで、この章では、認知症の種類ごとの中核症状と治療法を解説していきます。

認知症には大きく分けて「アルツハイマー型」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」の3種類がありますが、それぞれで中核症状の出方が異なります。

この章では、認知症の種類によって異なる中核症状を、詳しく見ていきましょう。

3-1.アルツハイマー型認知症の場合

まずは、アルツハイマー型認知症の例を見ていきましょう。

3-1-1.特徴

アルツハイマー型認知症は、65歳以上の人で最も多い認知症です。年齢が高くなるほど有病率は高くなります。また、男性よりも女性に多くみられる傾向があります。

アルツハイマー型認知症は、運動や食事、喫煙などの生活習慣の乱れによって発症のリスクが高くなることが知られています。また、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった病歴がある場合にも発症率が高くなります。

アルツハイマー型認知症は緩やかに進行していくといった特徴があります(若年性を除く)。人によって進み方や症状の出方は異なります。

3-1-2.中核症状

アルツハイマー型認知症の中核症状としては、

  • 記憶障害
  • 見当識障害
  • 実行機能障害
  • 判断力の低下
  • 失言

以上のようなものが挙げられます。アルツハイマー型の場合中核症状はほとんどのケースで見られ、進行するとともに徐々に強くなっていきます。

3-1-3.治療法

アルツハイマー型認知症の場合、治療方法は「薬物療法」と「非薬物療法」が行われます。行動や心理症状を抑える薬物を投与して経過をみます。また、リハビリを行ったり生活習慣を改善することで認知機能の低下を抑えるといった取り組みも行われます。

3-2.血管性認知症の場合

次に、血管性認知症の場合を見てみましょう。

3-2-1.特徴

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの病気によって引き起こされる認知症です。血管性認知症の直接の原因となる症状としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 脳梗塞
  • 脳出血
  • くも膜下出血
  • 頭の打撲 など

これらは加齢や高血圧、喫煙や糖尿病などの生活習慣によってもリスクが高まります。

血管性認知症はアルツハイマー型とは異なり、ある段階で一気に進行するのが一般的です。進行の仕方は一定ではなく、一気に進行したかと思うと一時的に停滞する、といったことが繰り返されます。進行速度は個人によって異なります。

3-2-2.中核症状

血管性認知症の主な中核症状は、以下の通りです。

  • 記憶障害
  • 見当識障害
  • 実行機能障害
  • 判断力の低下
  • 失語

このように、症状としてはアルツハイマー型など他の認知症と違いはありません。しかし前章で解説した通り、その進行の仕方が異なります。

3-2-3.治療法

血管性認知症の治療方針としては、「薬物治療」と「非薬物治療」が併用して行われます。薬物治療では血圧を下げる薬や、血液をサラサラにする薬が投与されます。また、禁煙や減塩など生活習慣を整えることも重要視します。

非薬物治療としてはリハビリ療法を行う事で、症状を抑制することが期待できます。運動機能のリハビリだけでなく、言語機能のリハビリなど様々なメニューが行われます。

3-3.レビー小体型認知症の場合

次に、レビー小体型認知症について解説します。

3-3-1.特徴

レビー小体型認知症はアルツハイマー型認知症、血管性認知症の次によく見られる認知症です。脳内にレビー小体がたまることで脳の神経細胞が減少する認知症で、早い場合には40歳ころから発症するケースもあります。

レビー小体型認知症の特徴として、「良いときと悪いときの症状の差が激しい」という点が挙げられます。意識がしっかりしていることもあるため、認知症が見逃されやすいという特徴もあるのです。

3-3-2.中核症状

レビー小体型認知症の中核症状としては、以下が挙げられます。

  • 判断力・理解力の低下
  • 失認
  • 実行機能障害

レビー小体型認知症の場合、初期段階では記憶障害が目立たないことがあります。そのかわり判断力が低下したり、失認といった行動が現れます。

また、他の認知症には見られない特徴的な症状として以下が挙げられます。

  • 幻視
  • 睡眠時の異常行動
  • パーキンソン症状

これらは他の認知症にも表れるような中核症状ではないものの、レビー小体型認知症特有の症状であり、「中核的症状」ともいうことができます。

そこにないはずのものが見えたり、そうした幻視から妄想に発展するといったことがあります。睡眠時の異常行動としては、睡眠中に突然怒鳴ったり、暴れたり暴力をふるうといった行動が出ることがあります。

レビー小体型認知症の場合は「パーキンソン症状」という症状が出ることがあります。パーキンソン病でみられる症状で、体が動かしづらかったり手が震えるなどの症状です。

そのため、レビー小体型認知症は転倒の危険が高く、寝たきりになりやすいといった特徴もあります。

3-3-3.治療法

レビー小体型認知症の場合は薬物療法と、リハビリなどの理学療法が取り入れられます。

薬物療法では認知症状を抑える薬を投与します。本人だけでは薬の管理が難しいため、家族など周りの方の協力が必要です。

レビー小体型認知症はパーキンソン症状として身体がうまく動かせないといったものもあるため、筋力や体力の低下を抑えて正しい姿勢を身につけたり歩行を行ったりするリハビリが行われます。

5.認知症の中核症状は治療改善しないため早期発見・対策が重要

ここまで解説してきた通り、認知症の中核症状に関しては治療によって改善することはできません。しかし病気の進行を抑えたり、軽減することは可能です。そのため、早期発見・対策が重要となるのです。

また、周辺症状に関しては生活習慣を見直すことで大幅に改善できることもあります。

認知症は、その種類によって治療法やアプローチが異なります。早期に発見することで適切な対応をすることができるのです。また、認知症以外の重篤な病気の場合でも、認知症に似た症状が現れることもあります。

「認知症かも?」と思っても放置してしまうと、手遅れになってしまうことも考えられるのです。そのため、もしも少しでも気になることがあれば、医療機関に相談することをおすすめします。

詳しく知りたい方は、【認知症の検査内容とは?検査の流れと事前に把握しておくべきことを解説】をご覧になってみてください。

6.まとめ

以上この記事では、認知症の中核症状の基礎的な知識を中心に、以下の内容を詳しく解説してきました。

この記事のポイント
認知症の中核症状の種類中核症状と周辺症状の本質的な違い認知症の種類ごとの中核症状と治療法認知症は早期発見・対策が重要

この記事をお読みいただくことで、認知症の中核症状についての概要をご理解いただけたかと思います。ぜひこの記事を参考にしていただき、認知症の対応に役立てていただければ幸いです。

認知症の中核症状とは? 主な5種類と周辺症状との本質的な違いも解説

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

ブレインヘルスケア・オンライン編集部では認知症や様々な脳疾患領域に関連する情報を発信していきます。「ブレインヘルスケア」という考え方を通して脳の健康について学べるメディアを目指しています。

目次