認知症で寝たきりになるとどうなる? 余命や介護のポイントを解説します!

認知症で「寝たきり」になるとどうなる? 余命や介護のポイントを解説します!
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認知症が進行すると、認知機能の低下に加えて身体機能もガクンと落ちる時期がやってきます。この段階になると、歩く・座るといった基本的な動作も困難になり、活動量が大幅に減って徐々に「寝たきり状態」に。

寝たきり状態になると、食事から排泄、入浴に至るまで、日常生活のほぼ全てにおいて介助が必要になるほか、抵抗力も低下するため、感染症や様々なリスクにより手厚いケアが必要になっていきます。

認知症で寝たきりの状態になった場合、どのようなことに気をつける必要があるのでしょうか? 

今回は寝たきり認知症のリスクと余命への影響、そして、適切な介護のポイントについて詳しくご紹介します。

「寝たきりになったらどうなるの?」「どんな最期を迎えるの?」「余命はどれくらい?」そんなお悩みをお持ちの方は、ぜひチェックしてみてくださいね。

目次

認知症が進んだら「寝たきり状態」に要注意!

記憶力や判断力・思考力といった認知機能が徐々に低下していく認知症。認知症と聞くと、物忘れや徘徊といった症状が思い浮かびますが、一般的に重度まで進行すると、日常のほぼ全てに介助を要する「寝たきり状態」に移行していきます。

いつもできていた日常動作ができなくなる

認知症の症状が進行すると「食べる」や「着替える」といった日常動作のやり方がわからなくなる「失行」という症状が起こります。

この段階ではまだ身体は動かせる状態ですが、徐々に身体機能も低下し、最終的に「立つ」「歩く」といった基本的な動作ができなくなっていきます。

徐々に身体が衰えて「寝たきり」の状態になる

このような状態が長く続くと、起こりやすいのが「廃用症候群」です。

廃用症候群は、長期間の安静状態や運動量の減少によって「今まで使っていた機能を使わなくなることで、その機能がどんどん衰えていく状態」を指し、寝たきり状態に直結します。

筋肉や骨格、臓器といった身体的な機能はもちろんのこと、精神面や認知面にも影響を及ぼすため、さらなる悪循環を招いて雪だるま式に心身機能の衰えがが進んでいきます。

廃用性症候群が寝たきり状態を招いてさらに症状が進んでいくため、いかにして残っている機能を維持するかが対策のカギとなります。

「寝たきり認知症」はどんな状態?

では、具体的に「寝たきり認知症」はどのような状態になるのでしょうか? 順番に見てみましょう。

「体力が大幅に低下する」

寝たきり状態になると、まず避けられないのが体力の大幅な低下です。

身体を動かさないことによって筋肉や骨格の衰え、心肺機能の低下、さらには内臓機能の不活発が引き起こされ、これらの要素が組み合わさることで、体力が大幅に低下していきます。

「意思疎通が難しくなる」

認知症の進行とともに、言葉を理解したり、自分の思いを伝えたりする能力が低下しますが、寝たきりになるとその症状が加速度的に進みます。

これは、寝たきり状態によって五感から得られる刺激が少なくなることや、人とのコミュニケーションが大幅に減少することに加え、声を発する機能そのものが衰えることが関係しています。

「食欲が低下する」

寝たきり状態になると、活動量の低下と内臓機能の低下によって食欲が低下して食事量が減ります。その結果、お腹が空きにくくなり、食事量が減少。これがさらなる体力の低下を招き、悪循環に陥りやすくなります。

また、この状態まで認知症が進行すると、食べる行動自体がわからなくなる「失行」や、食べ物を食べ物として認識できなくなる「失認」が起こる可能性も高くなります。

「排泄機能が低下する」

寝たきり状態になると、消化器系の機能低下や排泄に必要な腸や膀胱の筋肉が衰え、食物の消化・吸収が十分に行われなくなります。

さらに、寝たきりの状態では正しい排尿・排便の姿勢を取ることが難しくなるため、膀胱や腸に常に尿や便が残りやすくなるなど、排泄の質や量に影響が出ます。

残尿・残便は尿路感染症や慢性的な便秘につながるので、寝たきり状態の大きな課題となっています。

「寝たきり認知症」の余命はどれくらい?

認知症の介護で気になる「最期の迎え方」。認知症で寝たきりになった場合、余命にはどのような影響を及ぼすのでしょうか?

認知症の余命は、おおむね5〜12年

認知症で寝たきりの状態になってからの余命は個人によって異なるため、はっきり「◯年」とは言いづらいのが現状です。しかし、多くの先行研究から一般的に5〜12年といわれることが多いようです。

ただし、これはあくまで平均的な数値。患者の年齢や基礎疾患、生活環境やケアの質などによって大きく変わるため、一概にはいえません。

認知症で寝たきりになった場合、死因は「肺炎・衰弱死」が多い

寝たきりの認知症患者が亡くなる原因として最も多いのは、「肺炎」や「衰弱死」です。とくに、寝たきり状態になると免疫力の低下や食事量の減少が影響し、誤嚥による肺炎が起こりやすくなります。

抵抗力が弱まった状態では、本来なら負けるはずのない菌にも身体が侵されてしまい、治療を行っても回復できずにそのまま衰弱して死に至るケースが少なくありません。

さらに、感染症からの回復が見られた場合でも身体へのダメージが深刻なため食事が摂取できず、衰弱死につながることがあります。

余命に関しては人それぞれではありますが、総じて寝たきり状態では健常の状態に比べて様々なリスクが高まります。適切なケアを行うことが穏やかな最期を迎えることにも繋がりますので、ここから詳しく見てみましょう。

どのようなリスクが高まる?〜寝たきり介護のポイント〜

では、寝たきり状態になると具体的にどうなるのでしょうか? 今回は、中でもとくに注意したい「褥瘡(じょくそう)」「誤嚥性肺炎」「尿路感染症」「拘縮」「血栓症」に注目してみましょう。これらを防ぐ介護のポイントと一緒に、詳しくご紹介します。

【褥瘡(じょくそう)】のリスクが高まる

寝たきり状態で長時間同じ姿勢を続けると、皮膚に圧力がかかって血流が滞り、「褥瘡(じょくそう)」が発生するリスクが高まります。

症状が軽いうちは皮膚に赤みが出る程度ですが、いつも同じ場所に圧がかかる状態が続くと皮膚とその下の組織が損傷し、痛みが出たり、ただれたり、傷に発展したりします。

栄養状態の悪さも褥瘡を悪化させる要因になりますので、寝たきり認知症の方は要注意。感染症を引き起こす原因ともなりますので、対策が必須です。

ポイント① 体位交換をこまめに行う

褥瘡の予防には、定期的に身体の向きを変える「体位交換」が必須です。これによって一部の皮膚に長時間圧力がかかるのを防ぎます。

寝たきりになると自分で寝返りをうつことも難しくなります。介護者が2時間に1度を目安に、左向き・仰向け・右向きなど、寝姿勢を変えるよう介助しましょう。

ポイント② 体圧を分散させる

褥瘡は、身体の中でも「できやすい部分」があります。とくに、関節は一点に圧がかかりやすいので、要注意。体圧分散マットレスやクッションを使用して体圧を均等に分散させ、褥瘡の発生を防ぎましょう。

【褥瘡ができやすい部分】

  • 仰向けに寝ているとき: 尾骨(尻尾の骨)、肩甲骨、頭の後ろ、踵(かかと)
  • 横向きに寝ているとき: 耳、肩、肘、骨盤の突出部(大転子)、膝、踵

【誤嚥性肺炎】のリスクが高まる

寝たきり状態になると、食べ物・飲み物を飲み込む「嚥下(えんげ)機能」が低下します。これによって飲食物が誤って気管に入りやすく、肺炎を引き起こす「誤嚥性肺炎」のリスクがより一層高まります。

さらに、口腔内の清潔が保たれていないと、自分の唾液ですら誤嚥性肺炎の引き金になることも少なくありません。

抵抗力の落ちた寝たきり認知症の方にとっては死に直結する問題ですので、介護者は「口腔内を清潔に保つことと」、そして「ムセない(=気管に誤って入らない)こと」に気をつけて介助しましょう。

ポイント① 口腔ケアを丁寧に行う

口腔内の清潔を保つことは、誤嚥性肺炎の予防の基本です。

一般的には食後の歯磨きをイメージされるかと思いますが、誤嚥性肺炎の予防効果を高めたいなら、食前にも行うのも重要です。万が一気管に食べ物が入ってしまっても、口の中の細菌を減らしておくことでリスクを減らすことができます。

寝たきり認知症の方はうがいができない場合も少なくないので、うがい不要の口腔ケアジェルやスポンジブラシなど、専用商品を活用しましょう。

また、口腔ケアは歯や口腔粘膜、舌などの汚れを取り除くだけでなく、その刺激が口腔機能の維持や回復に役立ちます。食前・食後・就寝前などタイミングを決めて、積極的に行いましょう。

ポイント② 水分にとろみをつける

誤嚥性肺炎を予防するためには、何より「ムセない」ことが重要です。通常の水分は誤嚥を起こしやすいので、介護専用の「とろみ剤」を活用しましょう。とろみ剤は水やお茶、味噌汁などの水分にとろみをつけることで、飲み込みやすくする商品です。

喉を通る速度が遅くなるので、飲み込むタイミングを調整しやすくなり、誤嚥のリスクを減らすことができます。片栗粉や葛などを使って工夫するのも有効です。

【尿路感染症】のリスクが高まる

寝たきり状態では、尿路感染症のリスクも見逃せません。

尿路感染症は、尿道、膀胱、尿管、腎臓などの尿路が炎症を起こす病気です。排尿痛や血尿といった尿の異常のほか、肺炎と同じように発熱や倦怠感などの全身症状を引き起こすことがあるため、要注意。

寝たきり状態では正しい排泄の姿勢が作りづらく、さらに排尿に関わる膀胱まわりの筋力が低下しているため、膀胱に尿が長時間溜まりやすく、尿路感染症の原因に。

とくに、寝たきりの認知症の方はおむつの使用によってそのリスクも高まるので、介護者は以下のポイントに注意しながら、ケアを行いましょう。

ポイント① おむつ交換をこまめに行う

おむつを長時間交換しないでいると、尿や便によって衛生状態が悪くなり、尿路感染症の原因となります。だいたい3〜4時間ごとを目安に、1日7回程度交換を行いましょう。

また、排泄のタイミングを見計らって行うことも重要です。起床後や食後など、排泄しやすい時間帯を掴めるよう、記録しておきましょう。

ポイント② 陰部の清潔を保つ

尿路感染症の予防には、陰部の清潔さを保つことが重要です。おむつ交換の際には、陰部をしっかりと拭いて清潔にしましょう。時には、お湯を使って洗うのも効果的です。

とくに、排便があった場合はこすって綺麗にしようとすると皮膚を傷めることにもなりかねませんので、浸したタオルなどを用いて、すすぐように汚れを落としましょう。

使いやすいボトルやタオル、防水の使い捨てシートを用意しておくなど、道具を揃えておくこともおすすめです。

【拘縮(こうしゅく)】のリスクが高まる

寝たきり状態では、関節が動かないことで筋肉や関節が硬くなって可動域が小さくなる「拘縮(こうしゅく)」が起こりやすくなります。

拘縮は身体の動きをさらに制限するだけでなく、慢性的な痛みを引き起こすので、対策は欠かせません。とくに、脳血管性認知症で身体の麻痺を合併している方は要注意。褥瘡予防と共通する部分も多いので、欠かさず行いましょう。

ポイント① 同じ姿勢を続けない

同じ姿勢を長時間続けると、筋肉や関節が硬くなって拘縮のリスクが高まります。寝たきり状態になったら、定期的な体位交換や、軽い曲げ伸ばしの介助を行い、筋肉や関節の硬さを和らげましょう。

とくに、背中が丸まったような状態で拘縮が起こると、肺の広がりが妨げられて呼吸がしづらくなります。楽な寝姿勢を維持できるよう、介助しましょう。

ポイント② ゆっくりと動かす

長時間同じ姿勢を続けて身体がこわばっている状態で急に動かしたり、無理な動きを強いたりすると、痛みが生じます。

とくに、すでに拘縮が起こっている部分では、無理な力をかけることによって骨折することもあるので、介助する際はゆっくり動かすよう注意しましょう。

【血栓症】のリスクが高まる

寝たきり状態では血流が悪くなるため、「血栓症」のリスクが高まります。血栓症は、血液が固まって血管を塞ぐ病気で、主に心筋梗塞や脳梗塞、肺塞栓が挙げられます。

「エコノミークラス症候群」という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、寝たきり状態では、常にそのリスクにさらされることになります。命に直結する問題ですので、介護を行うときには以下のポイントに注意しましょう。

ポイント① 水分補給をこまめに行う

寝たきり状態では、どうしても血行不良が起こりやすくなります。少しでも血栓ができるのを防ぐためにも、ドロドロの血液にならないよう、注意しましょう。

常に意識したいポイントは、脱水状態に陥らないようにすることです。高齢になると喉の乾きを実感しづらくなるので、水分補給が進まないことも少なくありませんが、定期的に水分をとれるよう介助しましょう。

ポイント② 血行を良くする

寝たきり状態になると、自発的に身体を動かすことが難しくなるので、介護者が積極的に身体を動かすようサポートしましょう。具体的には、股関節周りを動かしてほぐしたり、ふくらはぎをマッサージしたりするのが有効です。

温めることも血行を促進させるので、洗面器に湯を張って「足浴(足をあたためる)」や「手浴(手をあたためる)」も効果的。血行をよくすることは褥瘡予防にもなりますので、積極的に行いましょう。

「寝たきり認知症」の介護で大切にしたいこと

最後は、寝たきりの方の介護をする上で大切にしたいことをおさらいしましょう。

寝たきり介護では身体的なケアだけでなく、心のケアも重要です。患者の尊厳を守り、最期まで納得のいく生活を送ることができるよう、サポートしていきたいですね。

「人としての尊厳」を最後まで大切にする

認知症が進行すると、自分の意志をうまく伝えることが難しくなったり、それまでと同じように暮らしていくことが難しくなったりします。

「今までの知っている姿」ではなくなってしまうかもしれませんが、だからといって人間としての尊厳を失ったわけではありません。介護者はご本人の意思を尊重し、尊厳を守った接し方をする必要があります。

介護される側・する側の関係を良好に保つことにも繋がりますので、関わる人々全てで共有しておきましょう。

「ご本人が納得した最期」を目指す

寝たきりの状態になると「もう何もわからないのではないか」と思われがちですが、そんなことはありません。快・不快、嬉しい・悲しいといった感情は最後まで残るといわれています。

認知症が進行すると自身の状態や治療について十分に理解できないことがありますが、可能な限りの説明や配慮を行い、ご本人が望む最期を目指しましょう。

認知症はゆっくりと進行していく疾患ですので、「どのような最期を迎えたいか」、暮らす場所や、受けたい医療・受けたくない医療など、早めに確認しておきましょう。

「温かいコミュニケーション」をはかる

寝たきり状態になり、たとえ言葉による意思疎通が難しくなったとしても、介護者の温かい雰囲気は、ご本人に安心感をもたらします。

目を合わせたり、手を握ったり、身体をさすったりするなど、言葉を使わないコミュニケーションを大切にしながら介助しましょう。

このように、お互いの肌に触れ合うことは、介護者にとってもストレス軽減やリラックス効果をもたらすことがわかっているなど、メリットが多くあります。

「介護者のケア」も忘れずに

寝たきりの介護は、身体的・精神的な負担が大きくなります。いつも介護される側に意識が向きがちになりますが、介護者自身のケアも忘れてはなりません。

自分自身の健康を維持し、適切な休息を取ることは、長期間にわたり質の高い介護を提供することにつながります。時には社会的なサポートを利用しながら介護の負担を軽減し、無理のない介護を目指しましょう。

まとめ

認知症の進行とともに活動量が減ると、今まで使っていた身体の機能が徐々に衰えて「寝たきり状態」に向かっていきます。

余命に影響するかどうかは人によりますが、一般的に、寝たきり状態になると抵抗力が低下するため、肺炎や尿路感染症といった合併症のリスクが急激に高まります。

時には命に関わることも少なくありませんので、介護者は正しい知識で対応しましょう。

とくに、寝たきり状態では同じ姿勢を取り続けることによって「褥瘡」や「拘縮」など、それまでにはなかったリスクが増えて手厚いケアが必要になります。

意思疎通が難しくなることも相まって、介護者の精神的な負担もかなり大きくなることが予想されるので、適度に休息をとったり、悩みを共有できるような相手を見つけたりして、介護負担を軽減するような体制を準備しておきましょう。

時には公的なサポートも検討するのも重要です。介護される側もする側も、最期まで笑顔でいられるよう、無理のない介護を目指していきたいですね。

認知症で「寝たきり」になるとどうなる? 余命や介護のポイントを解説します!

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この記事を書いた人

遠藤紗織のアバター 遠藤紗織 ライター

社会福祉士・介護福祉士の国家資格を保有するWEBライターとして、専門知識を活かした情報発信を得意とします。これまでに数多くの記事を執筆し、福祉分野の深い洞察とリアルな体験をもとに、読者の理解を深め、興味を引く記事作りを心掛けています。誰もが安心して生活できる社会を目指し、情報の提供を通じてその一助となれればと思います。

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