「認知症の初期症状にはどんなものがあるの?」
「最近、物忘れがよくあるけど…もしかして認知症の初期症状なのかな」
このようなことをお悩みではないですか?
認知症の代表的な初期症状としては、以下のような8種類があります。
一般的に「認知症かも?」と疑うきっかけになるのは、「物忘れ」ではないでしょうか。自分自身、または家族の物忘れが激しくなったと感じたときに認知症を疑う方は多いはずです。
しかし、実はただの「物忘れ」と「認知症」とみられる症状には大きな違いがあります。
その違いとは、たとえば以下のようなものです。
上記の詳しい内容については詳しく解説していきますが、まずはこのふたつに違いがあるという点について、ここで認識しておく必要があるでしょう。
認知症は診断の判断が難しい病気です。また認知症ではなく、別の重い病気が隠れていることもあります。
そのため、認知症の初期症状にはどのようなものがあるのか正しく理解し、必要に応じて検査を受けることが推奨されます。
そこでこの記事では、認知症の初期症状を中心に、ただの「物忘れ」との違いなど、以下の内容について詳しく解説していきます。
この記事のポイント |
認知症の代表的な初期症状8つ認知症の初期症状とただの「物忘れ」との違い認知症の初期症状の疑いがあるなら早めに検査を受けるべき |
この記事をお読みいただくことで、認知症の初期症状について詳しくご理解いただけるかと思います。
※認知症は、これから紹介する初期症状がすべて出る、というわけではありません。人によって出たり出なかったりする症状もありますし、その程度も異なります。
この記事を読んで少しでも気になるようであれば、医療機関に相談することをおすすめします。
認知症の初期症状とは
それではさっそく、認知症の初期症状について詳しく解説します。
以下が、認知症の初期症状の代表的な8例です。
それぞれ、見ていきましょう。
物忘れが激しくなった
認知症の最も代表的な症状が「物忘れ」です。例えば、以下のような初期症状が見られます。
- 何度も同じことを言ったり、聞いたりする
- 電話を切ってすぐに相手が誰だったのか忘れる
- しまい忘れや置き忘れが多く、ものを探すことが多くなる
- 薬を飲むのを忘れる など
これらの症状が増したと感じる場合には、認知症の可能性があります。
ただし、こうしたいわゆる「物忘れ」は認知症なのか、単なる「加齢」で起こっているのか分かりにくい部分もありますよね。冒頭でも解説しましたが、「物忘れ」と「認知症」には、大きく分けて以下のような違いがあります。
- 「体験を丸ごと忘れている」かどうか
- ヒントを聞いて思い出せるかどうか
- 物忘れの自覚があるかどうか
- 日常生活に支障があるかどうか
物忘れと認知症の違いについてより詳しくは、後ほど「2.「物忘れ」と「認知症」の違いとは」で解説いたします。
理解力や判断力が低下した
理解力や判断力が低下している場合にも、認知症の初期症状である可能性があります。
理解力が足りなくなると、以下のようなことが起こります。
- 複雑な話や展開の早い話についていけない
- 気候に合わせた洋服を選べなくなる
- ATMや自動改札機が使えなくなる
- 料理ができなくなる
- 事故に遭いそうになる
- 自分の体調の良し悪しが分からない など
物事を理解する能力が低下すると自分がどのような状況なのか、正常な状態では当然分かっているようなことが分からなくなります。判断力が低下すると自分がやるべき適切なアクションを起こせません。
より具体的なシチュエーションでいうと、本人の中では以下のようなことが起こっていると考えられます。
- 現在の自分の状況を把握して取るべきアクションを判断できなくなるため、「今は冬だから暖かい服を着よう」と考えたり、「夏だから涼しい服にしよう」と判断することが困難になる。
- 目に見えない部分で起きていることを理解できなくなるため、ATMや自動改札機のように「お金が機械に入っていく」ということが理解できず、機械を使えなくなったりする。
- 信号の「赤=止まれ」「青=進め」が判断できなくなるため、事故に遭いそうな機会が増える。
- 「元気ですか」と尋ねられても、自分では「お腹が痛い」「身体がだるい」といったことが判断できないため、何か症状があっても自己申告しないことがある。
以上は、認知症の一般的な初期症状のケース例です。
症状の出方や程度は人によって異なりますが、「今までできていた理解や判断ができなくなる」という点について思い当たるのであれば、危険であるため一度検査をしてみることをおすすめします。
集中力が低下した
認知症の初期症状のひとつとして、「集中力の低下」が挙げられます。
- 作業を続けることができなくなる
- ふたつの作業を同時に行えなくなる
- 切り替えができない
認知症の初期症状として以上のような例が挙げられます。
認知症になると、「注意障害」という障害が出てくることがあります。簡単にいうと、注意力が散漫になってしまうのです。集中して周りを見ながら作業することが困難なため、ふたつ以上の作業を同時にこなすといったことが出来なくなります。
集中力のコントロールができないため、活動を一貫して行うのも難しくなったり、何かを行っている際に、「次はこれをやって」と次の作業を頼んでも、うまく切り替えができないといったことも出てきます。
このような集中力の低下が、認知症の初期症状として現れます。
時間や場所が分からなくなる
認知症の初期症状の一つとして、時間や場所が分からなくなるといったものもあります。
- 今日が何月何日か分からない
- 自分がどこにいるのか分からない
- 昼夜が逆転した生活になってしまう
- 季節感がズレてしまう など
以上のようなことも、認知症の初期症状としてよくある例です。
たとえば何かの手続きをする際に、何月何日なのかが分からず書類を書くのに苦労したりします。歩きなれた道なのに迷子になったり、自分がどこを歩いているのか分からなくなるのも代表的な初期症状のひとつです。
またよくある例として、時間の感覚がなくなるために昼夜が逆転した生活になってしまうといったこともあります。
季節感が分からなくなってしまい、冬なのに薄着で出かけたり、夏なのに上着を羽織るといったことも起こります(これは「判断力の低下」によっても引き起こされます)。
このように、時間や場所が分からなくなるのも認知症の初期症状です。
無気力または無関心になった
認知症の代表的な初期症状に、「無気力・無関心」というものもあります。
- 自室に引きこもりがちになる
- 今まで楽しんでいた趣味に興味がなくなる
- 自己管理が出来なくなる
- 入浴や洗顔をしなくなる
- 生活がだらしなくなる など
以上のようなことは、認知症の代表的な初期症状と言えます。これは「アパシー」とも呼ばれます。
これまで当たり前にできていたことをやらなくなってしまうため、一見周りから見ると「だらしなくなった」と感じるかもしれません。
この症状がアパシーであるか、そうでないのかといった判断材料として挙げられるのは、長期的にそのような状況が続くかどうかという点です。
アパシーではなく、ただ単に無気力な状態であれば、数日で元に戻るといったことが一般的です。長期的に無気力な状態が続くのであれば、認知症を疑ってみてもいいかもしれません。また、アパシーはうつ病とも似た症状が出ます。
どちらも重篤な病気に進行することもありますので、無気力状態が続くようであれば医療機関で検査してもらいましょう。
人柄が変わった
認知症になると「人柄が変わる」ということも、よく見られる初期症状のひとつです。
- 突然怒り出す
- 暴力をふるう
- 以前より頑固になる
- 人付き合いが悪くなる
- 気遣いができなくなる
以前と比べて人柄が変わったな、と思うようなことがあれば認知症の可能性があります。これは理解力の低下とともに不安が大きくなったり、「その人らしさ」を司る部分に障害が生じたりすることで、引き起こされてしまう症状です。
不安なあまりに暴力をふるったり、大声をあげてしまったり、周りが感情的になだめようとするとさらに激昂するといったこともあります。これは「馬鹿にされている」と感じてしまうためです。
このような状況が見られるようであれば、認知症の初期症状の可能性があるため、一度医療機関を受診しましょう。
ものを盗られたと妄想するようになった
ものを取られるなどの「被害妄想」も認知症の代表的な初期症状です。
認知症になると認知機能が低下してしまいます。注意力が散漫になるなどのこともあり、「どこに何を置いたのか分からなくなる」「しまった場所を忘れる」といったことが起こります。
このような状況になった場合に、認知症でなければ「どこにしまったか忘れちゃったなあ」と自分で認識できますが、認知症の場合はこのように認識することすら難しくなります。
その結果、何か物がなくなった場合は「盗まれた」と妄想してしまうのです。そうしたことで誰かを責めてしまいケンカになったり、大きなトラブルになることもあります。
この「被害妄想」は認知症初期の段階では「ものを盗られた」というかたちでよく現れますが、次第に「家族に邪魔者扱いされる」「妻が浮気している」といった方向で被害妄想が加速することもあります。
幻覚を見るようになった
認知症になることで、幻聴や幻覚をみるといったことがあります。
たとえば以下のように、実際には存在しないものが見えたり聞こえるといったことです。
- 「知らない人が部屋にいる」
- 「子供が部屋の隅で寝ている」
- 「亡くなった妻(夫)がベッドの横にいる」
認知症による幻覚や幻聴の場合、本人ははっきりとその発言を聞いたり見たりしています。
たとえば私たちも、「なんかあの人に笑われている気がするなあ」と被害妄想的になってしまったりするシーンがあります。しかしそれは実際は誤解(錯覚)で、実際は相手にそのような意図はなかった、というようなことは日常的にあるかと思います。
また、ドアのノックの音が聞こえたな、と思ったらテレビの音だった、というような錯覚もふだんよくありますよね。
これらは認知症の場合はそうした「錯覚」ではなく、実体感を持って幻覚を見たり聞いたりしているのです。彼らの中では実在しない人と話したり、見えていたりします。
少々ややこしいですが、以下のようなイメージです、
そのため、周りが「それは幻覚だよ」と言っても本人は理解できません。このあたりは鑑別が難しいため、もしも幻覚のような症状があるのであれば、やはり医療機関で検査することをおすすめします。
「物忘れ」と「認知症」の違いとは
ここで、認知症の初期症状を理解するために、ただの「物忘れ」と「認知症」との違いについても詳しく解説していきます。
認知症かどうかを疑う最も大きなきっかけのひとつが「物忘れ」ですが、実は、ただの「物忘れ」と「認知症」には以下のような違いがあります。
それぞれ見ていきましょう。
「体験をまるごと忘れている」かどうか
認知症と単なる物忘れの大きな違いとして、「体験をまるごと忘れている」かどうかがポイントとなります。
- メガネをどこに置いたか忘れる
- 朝ごはんで何を食べたのか忘れる
- 旅行に行ったときに、なんという旅館に泊ったのか忘れる
以上のような経験を持つ人はいるのではないでしょうか? しかし、これはそれぞれ「メガネをどこかに置いた」「朝ごはんを食べた」「旅行へ行った」ということは覚えている状況です。
これはただの物忘れであり、認知症とはいえない可能性が高いです。
一方、以下のように体験をまるごと忘れている場合は、認知症の可能性があります。
- メガネの存在そのものを忘れている
- 朝ごはんを食べたことを覚えていない
- 旅行に行ったことを覚えていない
ヒントを聞いて思い出せるかどうか
何らかのヒントを与えられると思い出せるかどうかも、認知症とただの物忘れの大きな違いです。
たとえば、
- 好きな映画の主演俳優の名前を忘れる
- 最近行ったお店の名前を忘れる
- 作ったことのある料理の手順を忘れる
これらのことは大抵、ヒントを与えたり、時間が経てば思い出すことです。
映画の名前を言えば「ああ、そうそう」と思いだしたり、一緒にお店に行った状況を話せば思い出したり、レシピをみれば思い出したりといったことであれば問題ありません。
しかし、以下のようにヒントを伝えたとしても思い出さなかったり、忘れていることも自覚していないのであれば、認知症の初期症状を疑ってもいいかもしれません。
- 好きな映画の話をしても忘れている
- 最近行ったお店の名前を言っても思い出せない
- レシピを見ても作ったことを思い出せない
物忘れの自覚があるかどうか
前章で解説した事と少し重複しますが、そもそも物忘れの自覚があるかどうかも認知症かどうかを判断するうえで大きな指標となります。
「最近物忘れが激しくて、もしかしたら認知症かも…」と本人が思っているのであれば、認知症の可能性は低いといってもいいでしょう。
しかし、本人が物忘れに気づかず、指摘しても自覚がなく、家族が認知症を疑っている、ということであれば認知症が疑われます。
日常生活に支障があるかどうか
「物忘れ」によって日常生活に大きな支障があるかどうかも、認知症とただの物忘れを分ける指針となります。ただの物忘れの場合は日常生活が多少不便であっても、大きな支障が出るというところまではいきません。
しかし、認知症の場合は以下のようなことが起こります。
- 何度注意しても、鍵をかけずに家を出る
- 買い物ができない(間違ったものを買ってきてしまう)
- 何度も同じことを聞く
- 約束をすっぽかす
- 家電の使い方が分からなくなる
このようなことが日常的に起こるのであれば、認知症の可能性が考えられますので、医療機関に相談することをおすすめします。
【注意】認知症の症状ではなく「MCI(軽度認知障害)」の可能性もある
日常生活には支障がない場合でも、「MCI(軽度認知障害)」の可能性もあるので注意が必要です。MCIは認知症の一歩手前の段階です。認知機能に低下があるものの、日常生活に支障をきたすほどではない、というのがMCIです。
MCIに気づくことができれば、実は正常な状態に治療することが可能なケースがあります。通常、認知症になってしまうと進行を遅らせることはできても完治することはできません。
しかしMCIの段階で予防策を取っておくことで、改善させることは十分に可能なのです。そのため、これは認知症ではなくただの物忘れだな、と思ったとしても、一度医療機関に相談することをおすすめします。MCIだと診断されれば、トレーニングや生活習慣を見直すことで症状を改善できるでしょう。
認知症の初期症状を疑う場合は早めに検査しよう
以上、認知症の初期症状について詳しく解説してきましたが、もし「認知症かも?」と疑いがある人や家族がいるのであれば、すみやかに専門の医療機関にご相談することをおすすめします。
その理由や注意点について、詳しく解説します。
認知症で検査を早く受けるべき理由
「認知症かも?」と思ったら検査を早めに受けるべき理由は2つあります。
- 認知症だった場合に放置すると進行していくため
- 認知症以外の重大な病気が隠れている可能性があるため
認知症は早期に発見して治療を行ったり、生活習慣を見直すことで症状を抑えることが可能です。しかし、認知症をそのまま放置してしまうとどんどん進行してしまいます。
認知症は神経細胞が破壊されてしまえばもう回復しない症状もあるため、早期に検査を受ける必要があるのです。
また、認知症の初期症状と似た症状を持つ、別の重篤な病気である可能性もあります。そうした病気の中には、早期発見により完治するものもあります。
しかしそうした病気の場合も、「ただの物忘れ」だと思って放置してしまうと治療の機会を逃してしまうことが多いのです。以上のような理由から、「認知症の初期症状かも?」と疑うのであれば、すみやかに医療機関に相談することをおすすめします。
認知症で検査を受ける機関
認知症を疑ったら、以下のような機関で認知症の検査を受けることが可能です。
- 脳神経内科
- 脳神経外科
- 精神科
- ものわすれ外来 など
ただ、もしも自宅の近くにこのような診療科が無かったり、どこがいいのか不安だったりする場合はかかりつけ医に相談してみてください。かかりつけ医であれば状況をみながら、適切な医療機関を紹介してくれるはずです。
また、「地域包括支援センター」を活用する方法もあります。
地域包括支援センターは、高齢者の暮らしをサポートするための拠点です。相談窓口で状況を相談すると、適切な医療機関を紹介してくれるでしょう。認知症の検査について詳しい内容は、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
以上この記事では、認知症の初期症状を中心に「物忘れ」との違いなど、以下の内容について詳しく解説してきました。
この記事のポイント |
認知症の代表的な初期症状8つ認知症の初期症状とただの「物忘れ」との違い認知症の初期症状の疑いがあるなら早めに検査を受けるべき |
この記事をお読みいただくことで、認知症の初期症状について詳しくご理解いただけたかと思います。ぜひこの記事を参考に、検査を受けるかどうか検討してみてください。