認知症で入院するときの費用はどれくらい? 項目別に詳しくご紹介!

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認知症になると、時には入院して集中的に治療を行う必要があります。

はじめて入院する場合は、

  • 「認知症で入院する場合、必要な費用はどれくらい?」
  • 「どのようなことにお金がかかるの?」
  • 「費用が高額だった場合、どうすればいいの?」

といった不安も多いのではないでしょうか。

入院中は治療費や食事代の他にも、入院中に必要な物品を購入する費用や、介護者が生活を維持していくための費用など、いつもはかからない費用が発生することも少なくありません。お金の不安は事前に解消しておきましょう。

今回は、必要な費用やその内訳、治療費が高額となった場合に使える制度について詳しくご紹介します。

「そもそも、認知症で入院は可能なの?」「どのようなときに入院が必要になるの?」といった疑問にもお答えしていくので、ぜひチェックしてみてくださいね。

目次

「認知症で入院」って可能なの?

まずは、認知症で入院するのが可能かどうか、見てみましょう。

一般的に認知症で入院する場合、「認知症の症状が進行して入院が必要になる場合」と「認知症を持った人が他の疾患や怪我で入院する場合」の2つが考えられます。

まず「認知症の症状が進行して入院が必要になる場合」について考えてみましょう。この場合は、認知症の症状自体を管理・治療を目的としたものになります。

例えば、認知症の進行により自己管理が困難になったり、他人に危害を及ぼしたりする可能性がある場合、また、介護者の生活を著しく阻害する場合などがこれに当たります。

いずれも自宅での対処では改善がみられず、薬を飲むことを拒んだり、その他の治療拒否があったりする場合は、認知症を専門とする医師による入院治療の対象となります。

もうひとつは、「認知症を持った人が他の疾患や怪我で入院する場合」です。

この場合は、該当の疾患に加えて、認知症の症状が入院後の治療や生活に影響を与える可能性があるため、認知症に特化したケアが行える病院や科を選ぶ必要が出てきます。病院選びに関しては、かかりつけの医療機関と相談して決めましょう。

認知症で入院になるのはどんなとき?

では、具体的に認知症の治療のために入院が必要と判断されるのは、どのような状況でしょうか? 主に3つの判断基準をもとに入院が決まるので、それぞれ見てみましょう。

「精神保健福祉法」の基準に当てはまる場合

認知症の方が治療のために病院の精神科に入院する場合、その入院が必要かどうか精神保健指定医が「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)」に基づいて判断します。

精神保健福祉法の基準による入院は、主に「任意入院」「医療保護入院」「措置入院」の3つがあり、それぞれ入院に対する重要度と強制力に差があります。

● 任意入院

入院に対する強制力が最も低いものが「任意入院」です。任意入院は、患者と医師との間で合意が取れれば、入院が可能となります。

自分や周囲の状況に対して、ある程度の理解力や判断力が必要となるので、認知症においては症状がそれほど進んでいない初期の段階で適応されることが多いです。

この場合、患者自身で退院のタイミングを判断できるため、他の疾患と同じように好きなタイミングで退院することも可能です。

当然ながら、病状が悪化し、退院するべきではないと判断された場合は、退院の許可が降りません。その際は、次で紹介する「医療保護入院」に切り替わり、療養・治療が継続されます。

● 医療保護入院

「医療保護入院」は、精神保健指定医が入院による治療が必要だと判断したものの、患者が入院を拒否したり、治療の必要性を理解できなかったりする場合に、家族などの同意をもとに適応される入院方法です。

この場合の「家族など」には「配偶者・親権を行うもの・扶養義務者・後見人・保佐人」が該当し、本人の同意なしに強制的に入院させることができます。

● 措置入院

さらに、患者が精神障害により自身を傷つける可能性がある、または他人に暴力などを振るう恐れがある場合、都道府県知事の権限により「措置入院」が行われます。

措置入院はとくに強制力が高いため、通報を受けた都道府県知事が調査を命令し、調査の上で診療が必要と判断され、2名の精神保健指定医から入院の必要性が認められた場合にのみ行われます。

さらに緊急性を要する場合は、1名の特定精神保健指定医のみで入院の必要性を判断することが認められており、この場合は72時間限定で措置入院を行うことも可能です。

これを「緊急措置入院」といい、この間にご家族を探し出して医療保護入院に切り替えたり、もう1名の指定医が病状の評価に加わって入院の継続が必要かどうかを判断したりします。

認知症では現実認識が乱れ、自身を刃物で傷つけたり、他人に暴力を振るったりするなど、自傷・他害があるケースも少なくありません。

ご家族にとっては大変ショックな状況かと思いますが、これらの行動は認知症の進行により出現するものですので、適切なケアと治療が受けられるよう医療機関と連携していきましょう。

 介護者の生活に支障が出ている場合

認知症で精神科に入院となる場合、精神保健福祉法の基準だけでなく、介護者の生活に支障が出ているケースも考慮する必要があります。

例えば、睡眠や食事がとれないといった介護者自身の身体的・精神的健康を害する場合や、就労に影響が出ている場合などがこれに当たります。

とくに、妄想や幻覚が目立つ場合や、暴力的な行動が見られる場合、徘徊などがある場合は介護者にとって大きなストレスとなります。

医療機関で適切なケアを受けることで症状が改善することも期待できます。「レスパイト入院」「レスパイトケア」といった呼び方で入院を受け入れている施設もあるので、入院も視野に入れて今後の方針を考えましょう。

専門医によって入院が必要だと認められる場合

この他、治療を継続してきたものの認知症の症状が重度化している場合や、疾患や怪我といった他の理由が重なった場合にも、認知症の専門医が入院を推奨することがあります。

とくに、高齢であれば認知症以外の疾患リスクも高まっています。専門医は患者の病状を詳しく診察し、必要なケアを提供できる環境が家庭内で整っているかを判断しますので、悩み事や細かい状況などは日頃から詳しく共有しておきましょう。

入院ができないこともある!

一方、認知症で入院できないケースもあるので確認しておきましょう。入院できないケースは主に、「病院側が入院を拒否する場合」と「患者が拒否する場合」の2つが考えられます。

病院側が拒否する場合

認知症の方が入院する場合、病院や医療施設の選択によっては受け入れを拒否されることもあります。

とくに、認知症の症状が強く、大声を出したり、暴力をふるったり、徘徊がある場合は病院への入院を断られる可能性が少なくありません。

一度病院に入院を断られてしまうとご家族としては不安な気持ちになりますが、認知症患者の入院に専門的に対応している病院もあります。

対応に慣れている医療従事者であれば家族も安心して任せられるので、受け入れてもらえる施設を諦めずに探しましょう。かかりつけの医療機関や公的窓口に相談するのもよいでしょう。

患者が拒否する場合

一方、治療のために入院が勧められるものの、患者本人に判断能力があり、入院を拒否する場合も無理矢理に入院させることはできません

無理強いすることによって状況が悪化することもありますので、患者本人の意思を尊重しながら対応しましょう。

介護によって介護者の生活がままならなくなったり、自傷・他害がある場合などは介護負担が大きくなるので、医療機関に相談しましょう。「医療保護入院」や「措置入院」の適応になることもあります。

また、介護者が一旦介護から離れて心身を休めることを目的にするのであれば、入院の他に老人介護施設のショートステイ(短期入所)やデイサービスを利用することもできます。

様々な方法がありますので、いずれも医療機関や、地域包括支援センター、担当のケアマネージャーなどに相談してみましょう。

「認知症で入院」にかかる費用はどれくらい?

では、認知症で入院した場合、かかる費用はどれくらいでしょうか? 一般的に認知症で入院する場合、平均して月7万円ほどの自己負担額がかかるといわれています。

ただし、この金額は入院費用のみの額。 これに加えて病院での生活費や日用品費などがかかるため、総額ではもう少し高くなることが予想されます。

また、入院費用を大きく左右する要素が「病室の種類」と「医療保険の自己負担割合」、「入院期間」です。病状によっても変わりますが、高齢者の場合、一般的に入院期間が長引きがちで、その分費用も高めになることを心に留めておきましょう。

入院に関連する費用〜必ず必要なもの〜

ここからは具体的に必要な費用の内訳を見てみましょう。まずは、入院すると必ずかかる費用「検査費・治療費・食事療養費」についてご紹介します。

【認知症検査費】

入院するにあたり、事前に検査を行うのが一般的です。認知症の検査は主にMRI検査や神経心理検査といったものを組み合わせて行い、認知症の診断を確定させたり、今後の治療方針の決定に役立てたりします。

入院前はこれらの検査が行われる可能性が高いため、入院費用に含めておきましょう。

検査費用に関しては、基本的に医療保険の対象となるため、医療保険で定められた自己負担割合に基づいて決まります。自己負担割合が3割の場合、検査内容にもよりますが、だいたい数千円から数万円の負担を想定しておくのがよいでしょう。

【入院治療費】

入院治療費は、病院の規模や期間によって定められた1日あたりの基本料をもとに、日数分の費用が必要となります。

この費用の中には、診療費、入院料、投薬料、注射料、処置・手術料、検査料などが含まれており、原則、公的医療保険が適用される場合、患者の自己負担額は70歳未満の被保険者であれば、全体の3割となります。

一方、70〜74歳は2割負担、75歳以上は1割負担と年齢によっても費用負担の割合が変わります。また、70歳以上でも現役並みの収入がある場合は3割負担となりますので、注意しましょう。

【食事療養費】

入院中の食事に関わる費用も必ずかかります。これらは「食事療養」として扱われ、一般的に1日3食1,380円を限度に、1食あたり460円が患者の自己負担分(食事療養標準負担額)となります。

30日間の入院であれば、460円×3食×30日=41,400円を支払う必要があり、それを超えた額は健康保険組合が負担する仕組みです。

入院に関連する費用〜状況によって必要なもの〜

ここからは、状況によってかかる費用をご紹介。個室などを希望した場合に請求される「差額ベッド代」や、家族が病院へ通うための「交通費」、病院から指定された物品を用意するための「日用品費用」など、詳しく見てみましょう。

【差額ベッド代】

何かと不安や不便の多い入院中は、治療に専念し、快適な入院生活を送るためにも個室や少人数部屋を希望することもあるでしょう。

金額は病院によっても異なりますが、個室・2人部屋・大部屋(4人以上〜)が一般的で、室料はそれぞれ「差額ベッド代」として全額自己負担となります。

入院に関わる費用の中でも大きな比重を占める項目となる可能性が高いので、例えば入院してすぐのときは個室、症状が落ち着いたら大部屋にするなど、費用とメリットのバランスが取れるところを探しましょう。

【交通費】

家族が病院を訪れる際の交通費も、人によっては大きな額となります。とくに入院期間が長引く場合や、自宅から遠くの病院を選んだ場合は、その分費用もかさみます。

電車代、バス代、駐車場代、ガソリン代など、想定される日数分を事前に計算しておきましょう。

【日用品費用】

病院で使用する身の回りの日用品、たとえばティッシュペーパーや歯ブラシ、パジャマなどを購入する費用も必要な費用に含めておきましょう。場合によっては、テレビカード代やクリーニング代がかかるかもしれません。

また、認知症の方が入院されるときは同時に身体介護も必要となる場合が多く、おむつ代や口腔ケアのためのグッズなど、病院から必要な物品を指定される場合もあります。

嗜好品としてのお茶やジュースなど幅広い面で費用がかかるので、意外と高くなってしまいやすい項目でもあります。普段の自宅で使っているものを病院に持っていくなど、効率よく準備しましょう。

【家庭のサポート費用】

家族が入院した場合、通院に伴って家事が十分にできなくなる可能性があります。普段どおり家庭を維持するための費用として、あらかじめ備えておくと安心です。

とくに、小さなお子さんがいるご家庭では託児を頼むケースも出てくるでしょう。普段通りに家庭を維持するための費用がかさみがちになるので、必要な費用を視野に入れておきましょう。

【その他(お見舞いへのお礼など)】

意外と見落とされがちですが、病院にお見舞いに来てくれた方、お見舞いを贈ってくれた方へのお礼も必要となるでしょう。

金額の目安としては、一般的にいただいた品の3分の1から2分の1相当。状況が落ち着いた退院後に品物をお返しとして贈ることが多いようです。

このように、入院中は想定外の費用が発生しやすくなります。期間が長引けばその分費用はかさみますし、介護・看病のための休業に伴う収入の減少も視野に入れる必要も出てくるかもしれません。

加入されている医療保険によってカバーできる場合もありますが、一般的にプラスになることは稀ですので、入院のための費用は余裕をもって用意しておくと安心です。

「治療費が高額で払えない!」そんなときは?

では、請求が高額となった場合、どのような解決策があるのでしょうか? 最後は、困ったときの手立てをご紹介します。費用に関する不安は事前に払拭しておきましょう。

病院に相談する

費用に関して困ったことがある場合は、まずは医療機関に相談しましょう。規模の大きな病院には「医療ソーシャルワーカー(MSW)」と呼ばれる保健医療分野における国家資格所有者が在籍しています。

分割払いや支払い期限の延長、使える公的制度の紹介など、あらゆる面に対応してくれるので、まずは相談してみることが重要です。

使える制度を確認する

入院費用が高額となった場合、治療費に関しては「高額療養費制度」や「高額医療費貸付制度」などを利用することができます。

高額医療費制度は、一定の基準額を超えた医療費が発生した場合に、その超過分の負担を国や地方自治体が支援して個人の負担を軽減するための仕組みです。

一方、高額医療費制度の対象となった場合も、限度額を超えた分の返金には3ヶ月ほどかかるといわれています。

対象となった費用が返金されるまでの間、医療費などを無利子で借りられる「高額医療費貸付制度」といった制度もありますので、合わせて確認しておきましょう。

いずれの制度も、所得や世帯構成によって基準額が異なるなど、制度の詳細や対象となる医療費の範囲は複雑です。具体的な利用方法や条件については、医療機関や公的窓口に確認してみましょう。

まとめ

年齢を重ねるにつれ、がんや脳梗塞、心疾患などでの入院は多くの方が予想しているかもしれませんが、認知症によって入院するケースも少なくありません。認知症の場合も他の疾患と同様に費用がかさみますので、事前に確認することがおすすめです。

とくに長期間ともなると、その分費用も増えて家計を圧迫します。医療費が高額で困った場合は、病院の医療ソーシャルワーカーに相談し、解決策を提案してもらいましょう。

また、治療費などの直接的にかかる費用以外にも、介護度が高い患者の場合は、おむつや口腔ケア用品、介護しやすい衣類などの日用品について、病院側から指定されることもあります。

入院中は病院に通う家族も負担が大きくなりますので、突然の事態に備えて、必要な費用の確保、生活用品の確認などは事前に準備しておきましょう。

【参考資料】
● ソニー損保 『保険選びガイド』

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この記事を書いた人

遠藤紗織のアバター 遠藤紗織 ライター

社会福祉士・介護福祉士の国家資格を保有するWEBライターとして、専門知識を活かした情報発信を得意とします。これまでに数多くの記事を執筆し、福祉分野の深い洞察とリアルな体験をもとに、読者の理解を深め、興味を引く記事作りを心掛けています。誰もが安心して生活できる社会を目指し、情報の提供を通じてその一助となれればと思います。

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