認知症ってどんな病気? 物忘れとの違いや原因となる疾患についてもご紹介!

認知症ってどんな病気? 物忘れとの違いや原因となる疾患についてもご紹介!
  • URLをコピーしました!

認知症とは、一体どういった病気なのでしょうか? 高齢者が物忘れをするようになったら、それはただの「歳のせい」なのか、それとも「認知症の始まり」なのか。その境界はなかなか曖昧ですよね。

認知症は、脳の神経細胞が何らかの原因で損傷することで、記憶や思考、判断力などの認知機能が低下する病気です。単に「物忘れが酷くなる」だけではないため、症状の進行とともに日常生活に必要な様々な能力が損なわれていくのが特徴です。

今回は、そんな認知症がどのような病気なのか、具体的に見ていきましょう。一口に「認知症」と言っても、その症状は多種多様。原因となる病気によっても違いがあるため、どの病気を原因とする認知症なのか、明確にしておくことが重要です。

そして、起こりうる症状を把握し、それに対してできる限りの対策をして “その人らしい毎日” を目指していきましょう。もしかして認知症? と不安なご本人、ご家族の方、必見です。

目次

認知症はどのような病気?

脳の病気のひとつである「認知症」。厚生労働省の推計によると、2025年には5人に1人が認知症になるとされており、今や他人事ではありません。認知症はどういった病気なのでしょうか。詳しくみてみましょう。

認知症は、単なる「物忘れ」とは違います

この病気は、単なる「物忘れ」とは違います。年齢を重ねると、どうしても忘れることが増えてきますが、それは一時的なものであり、思い出すきっかけがあれば記憶を取り戻すことができます。

しかし、認知症では、病気が進行するにつれて記憶が完全に失われてしまう状態になります。そして、記憶力だけでなく、判断力や思考力など日常生活を送るうえで必要な様々な認知機能が低下していきます。

ときには、人格や感情にも影響を及ぼすこともあるため、自分が自分でなくなっていくような不安感に襲われることも。

症状が軽い初期段階では本人も周囲の人も気が付かないことも多いですが、これらの症状が長期間にわたり徐々に進行していくことで、日常生活に大きな支障をきたすようになります。詳しくは、「物忘れ」についての記事も合わせてご確認ください。

若年層で発症することも

認知症は、主に高齢者に見られる病気ではありますが、なかには65歳以下の比較的若い人々が発症する「若年性認知症」も存在します。症状は高齢者の認知症と概ね同様ですが、現役世代ゆえの課題が多いのも特徴的。

こちらに関しては、詳しく掲載している記事がありますのでチェックしてみてくださいね。

認知症には様々なタイプがある

続いて、認知症のタイプについて見てみましょう。認知症はその原因となる疾患によって、いくつかの種類に分けられます。それぞれ発症のメカニズムや症状、進行の仕方に違いがあるので、基本的な部分を確認してみましょう。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー病に起因する「アルツハイマー型認知症」。こちらは、認知症全体のうち約60〜70%を占める最も一般的なタイプです。

アルツハイマー病は、長い年月をかけて脳にアミロイドβタンパク質とリン酸化タウというタンパク質が蓄積していくことで、脳内の神経細胞が徐々に破壊されて認知症を発症する病気です。

初期は日常生活に影響を及ぼさないレベルの物忘れから始まるため、病気だと感じる方はそれほど多くはないかもしれません。しかし、症状の進行はゆるやかですが完治することはなく、最終的には自立した日常生活が困難になります。

詳しい症状や治療法については、こちらの記事をご覧ください。

準備中

脳血管性認知症

脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳の血管が詰まったり壊れたりする病気によって、脳組織の一部が正常に働かなくなることで発症する認知症です。

梗塞や出血が起こった場所によって細かい症状は異なりますが、記憶力の低下や思考力の低下といった認知症症状に加え、歩行困難や片側麻痺といった身体的な症状が現れやすいのが特徴です。

脳血管性認知症は、脳血管性の病気が再発するたびに階段状に悪化していく特徴があります。また、脳の侵された部分だけに障害が起こるため、できることとできないことの差が激しく、「まだら認知症」と呼ばれることも。

症状の出方がアルツハイマー型認知症をはじめとする脳が変性するタイプの認知症とは異なるため、対応の仕方に工夫が必要です。以下で詳しく紹介しているので、合わせてチェックしてみてくださいね。

準備中

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、脳内にα-シヌクレインというタンパク質から成るレビー小体という異常物質が溜まることで発症する病気です。

脳の神経細胞が侵されるため、パーキンソン病のような硬直性の運動障害や、視覚的な幻覚が出やすいのが特徴的。しかし、症状の重さが日によって変わることもあるため、病気だと認識されないことも少なくありません。

症状のあらわれ方にも個人差があるため、パーキンソン病やうつ病、アルツハイマー型認知症など他の病気と間違われやすく、症状だけでは判断が難しい病気です。

また、一部の病理学的研究では、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症はしばしば共存し、一部の患者ではアミロイドβタンパク質の蓄積が見つかることもあるようです。

複数の認知症形態が共存する可能性や、これらのタンパク質が相互に影響を及ぼす可能性などなど、未解明な部分も多く、さらなる研究が必要とされています。レビー小体型認知症について詳しく知りたい方は、こちらの記事どうぞ。

準備中

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉や側頭葉が萎縮することで発症するタイプの認知症です。

この脳の領域は人格や行動、言語などの制御に重要な役割を果たしているため、人格や性格が変わり、感情のコントロールが難しくなったり、言葉を話すことが困難になるなど、記憶力以外の機能が低下するのが特徴的。

前頭側頭型認知症の原因については現在研究が進められているところですが、最近の研究では脳の神経細胞の中にある、タウタンパク質や「TDP-43」というタンパク質が関与していることがわかってきました。

さらに、前頭側頭葉型認知症の中でも、ピック球と呼ばれる変性したタンパク質の塊が見られるものはとくに「ピック病」と呼ばれています。

いずれも発病年齢の多くが50〜60歳と若く、若年性認知症の原因のひとつともなっていることから、特別な支援が必要となってきます。前頭側頭型認知症について詳しく知りたい方は、こちらを要チェック。

準備中

その他

ここまで原因となる病気別に認知症のタイプを見てきましたが、実はアルコールや頭部外傷といった病気以外の原因で脳細胞が破壊され、認知症を発症するケースもあります。

どちらも頻度としては多くはないものの、年齢に関係なく発症する可能性がある認知症です。思い当たる原因がある場合や兆候を感じる場合は、早めに専門医に相談しましょう。

認知症はどのような症状があらわれる病気?

このように、認知症は原因によって発生のメカニズムが異なる病気ですが、症状はいずれも “認知機能の低下” 。「中核症状」と「行動・心理症状」に分類されているので、それぞれ見てみましょう。

必ずあらわれる「中核症状」

「中核症状」は、記憶障害、思考力・判断力の低下、見当識障害、実行機能障害、失語、失行、失認など、認知症の定義上必ずあらわれる症状を指します。

具体的には、日常生活での出来事を忘れてしまったり、言葉を思い出せなかったり、日々の生活の中で繰り返し同じことを尋ねたりするなどなど。

いずれも、現在の医学では改善させることが不可能なので、いかに進行を遅くするか、が治療のポイントとなります。

少しでも和らげたい「行動・心理症状」

一方「行動・心理症状」は、中核症状が原因となってあらわれる症状を指します。

具体的には、徘徊や帰宅願望、介護拒否などが挙げられます。ときには暴言、暴力といった行動的な問題やうつ病のような精神症状などが起こることも。

これらの症状は誰にでも起こるわけではなく、周囲の環境やご本人の心身・精神の状態、介護者の対応などによって変化するものです。避けられない中核症状に対し、こちらは改善できるものですので、可能な限りご本人に寄り添った対応を心がけましょう。

症状の詳細や対応方法については、こちらをご覧ください。

認知症を正しく理解しよう

誰にでも起こりうる脳の病気、認知症。「自分が自分でなくなってしまうのでは…… 」と恐れられていますが、発症の原因によって、そして一人ひとりの心身や精神の状態、おかれている環境によって、症状のあらわれ方や進行度が大きく異なります。

ご自身、ご家族がどういったタイプの認知症なのか、今後起こりうる症状はどういったものなのか、積極的に情報収集してみましょう。正しく理解することは、その後の不安を和らげることにも繋がります。

また、認知症だと診断されてからは、生活習慣の改善や認知機能のトレーニングなど、認知症の進行を遅らせるための対策をとることも重要です。こちらについて詳しく掲載している記事がありますので、チェックしてみてくださいね。

準備中

まとめ

世界で類を見ないスピードで高齢化が進む日本において、認知症は誰にでも起こりうる身近な脳の病気です。この病気は単なる物忘れとは違い、脳の様々な機能が低下していくため、徐々に日常生活が困難になっていきます。

しかし、だからといって悲観する必要はありません。

生活環境を整えたり、使える制度やサービスを活用していくことで、その人らしい生活を最後まで送ることが可能ですので、「歳のせい」や「仕方ない」と諦めずに、情報を収集しましょう。

認知症は、発症の原因となる病気や状態によって、アルツハイマー型、脳血管性、レビー小体型、前頭側頭型といった多くの種類があり、それぞれ異なる原因や症状を持ちます。症状のあらわれ方も人それぞれで、まさに患者さんによって変化する病気。

介護者は認知症について正しく理解し、個々に寄り添った対応でサポートしていきましょう。

【参考資料】
● 内閣府 政府広報オンライン 『知っておきたい認知症の基本』
● 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 『もの忘れと認知症』
● 横浜市 『認知症とは』

認知症ってどんな病気? 物忘れとの違いや原因となる疾患についてもご紹介!

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

遠藤紗織のアバター 遠藤紗織 ライター

社会福祉士・介護福祉士の国家資格を保有するWEBライターとして、専門知識を活かした情報発信を得意とします。これまでに数多くの記事を執筆し、福祉分野の深い洞察とリアルな体験をもとに、読者の理解を深め、興味を引く記事作りを心掛けています。誰もが安心して生活できる社会を目指し、情報の提供を通じてその一助となれればと思います。

目次