脳梗塞は認知症の原因に! 症状と予防のポイントをご紹介します

「脳梗塞」は認知症の原因に! 症状と予防のポイントをご紹介します
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脳の代表的な疾患といえば、「脳梗塞」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。脳梗塞は、脳の血管が何らかの原因で塞がって詰まることにより、脳の神経細胞がダメージを受けて脳機能に障害が生じる疾患です。

歩行障害や言語障害、身体の麻痺といった身体的な症状が目立ちますが、梗塞が起こった場所や規模によっては、認知能力の低下、ひいては認知症が引き起こされることも少なくありません。

このように、脳梗塞に起因して発症する「脳血管性認知症」は意外と多く、認知症の原因の中でもアルツハイマー病についで2番目に多い疾患となっています。

今回は、そんな「脳梗塞」と「脳血管性認知症」について、原因や症状を詳しくご紹介。脳梗塞を予防するためのポイントも掲載するので、要チェックです。

目次

認知症の原因にもなるかも! 「脳梗塞」ってどんな疾患?

脳梗塞は、脳の血管が詰まることによって脳の一部が酸素や栄養を受け取れなくなり、神経細胞がダメージを受けて脳機能に障害が生じる疾患です。

身体の麻痺などが主な症状ですが、認知力の低下、ひいては認知症を引き起こすことも。まずは原因や症状について詳しく見てみましょう。

「脳梗塞」の原因とは?

一般的に、脳梗塞の原因として挙げられるのは「血栓」と「動脈硬化」です。それぞれ発生のメカニズムは違いますが、いずれも酸素や栄養が届かなくなって細胞死が起こる部分が共通しています。

● 血栓

血栓は、血液が凝固してできる血液のかたまりを指します。

脳梗塞では、血栓の成り立ちから、脳内の血管から発生する「血栓性脳梗塞」と、他の部位から脳に流れ込む「塞栓性脳梗塞」の2種類があります。どちらも脳血管内で血栓が形成された後、徐々に大きくなることで詰まりが生じ、細胞死を引き起こします。

● 動脈硬化

一方、動脈硬化は、血管の内側に脂質やコレステロールが蓄積し、血管壁が厚くなり硬くなった状態を指します。

脂質が蓄積することで血管が狭くなり、血流が滞りやすくなります。この血流の滞りが続くと、血管内に血栓が形成されるリスクが高まり、結果として血管が詰まる原因になるのです。

「脳梗塞」の症状とは?

脳梗塞は、梗塞が起こった位置や規模によって症状が異なります。初期の症状は一般的に「片方の手足が麻痺する・しびれる」「呂律(ろれつ)が回らない」「言葉が出てこない」「視野が欠ける」「吐き気がする」「めまいがする」といったものが代表的です。

ただし、中には自覚症状がないケースも少なくありません。これらは「隠れ脳梗塞」と呼ばれ、患者自身も気づかない場合がほとんどです。

隠れ脳梗塞は、ただちに顕著な症状があらわれるわけではないものの、脳の血流が慢性的に不十分になることで脳組織に損傷が蓄積されていき、徐々に症状が出現する場合もあります。

「脳梗塞」が認知症の原因になることも

このように、脳梗塞はダメージを受けた脳の部位によって症状の出方が異なりますが、身体的な症状だけでなく、その領域が制御している認知機能にも問題が生じ、認知症を発症するケースも少なくありません。

たとえば、前頭葉は思考、判断、意思決定などの認知機能に関与していますが、この部分が侵されると性格の変化や不適切な行動といった認知症の症状があらわれます。

同様に、側頭葉や頭頂葉にダメージが生じると、計算や読み書きが難しくなったり、いつもできていた行動の手順がスムーズにできなくなったりします。

これら脳梗塞に起因する認知症は「脳血管性認知症」と区別して呼ばれており、認知症の原因として2番目に多い疾患となっています。脳血管性認知症とは、一体どのような病気なのでしょうか?

「脳血管性認知症」について詳しく知ろう!

認知症は、その原因により「アルツハイマー型認知症」、「レビー小体型認知症」などといった形で分類されますが、「脳血管性認知症」もその中のひとつ。

脳血管性認知症は、脳梗塞といった血管の閉塞によるものだけでなく、脳血管が破裂して起こる脳出血や、微小血管の炎症による変形が原因で脳細胞が損傷し、認知機能が低下する疾患全般を指します。

脳血管性認知症の症状

脳血管性認知症で起こりやすい症状は、認知機能が低下する「認知症症状」と脳血管障害による「神経症状(麻痺や歩行障害、感覚障害、嚥下障害など)」に大別されます。

認知症の症状は、基本的に他の認知症と同様に「記憶障害」「見当識障害」「実行機能障害」ですが、脳のダメージを受けた部分によっても症状が変わるため、一概にはいえません。

今回は、一般的に脳血管性認知症の初期症状として挙げられることの多い「記憶障害・失行・失認・失語・人格や行動の変化」について、詳しく見てみましょう。

【記憶障害】

短期記憶の喪失から始まり、最近の出来事や新しい情報を保持することが困難になる症状です。例えば、今電話していた相手が誰なのか電話を切ると思い出せなくなる、繰り返し何度も同じ話をする、などが挙げられます。

【失行】

運動機能に異常はないのに、今まで自然にできていた簡単な日常動作ができなくなる症状です。例えば、着替えの際にボタンの掛け方がわからない、封を開けるためのハサミの使い方がわからない、などが挙げられます。

【失認】

目や耳など感覚器に異常はないのに、それを「意味ある対象」と認識できなくなる症状です。例えば、お茶碗に入ったご飯を “ご飯” と認識できずに手をつけない、眼鏡を “眼鏡” と認識できずにコップに入れてしまう、などが挙げられます。

【失語】

聴覚や発声に異常はないのに、言葉を話す・聞く・読む・書くこと(つまり、言葉のアウトプット)ができなくなる症状です。

例えば、流ちょうに話しているようで意味が伴っておらず、支離滅裂な内容になっている、言葉は聞こえていて意味も理解できるのに、自分が話そうとすると言葉がスムーズに出てこない、などが挙げられます。

【人格や行動の変化】

人格や行動を司る部分が侵されると、人が変わったように見えたり、反社会的な行動が見られたりすることがあります。

例えば、穏やかだった人が突然怒りっぽくなって怒鳴ることが増えた、今まで関心があったことに無関心になったり無気力になったりする、などが挙げられます。

脳血管性認知症の特徴とは?

このように、脳血管性認知症では他の認知症と同様の症状が見られる一方で、脳血管性認知症ならではの特徴も少なくありません。以下で詳しく見てみましょう。

「まだら」に症状があらわれる

脳血管性認知症では、脳内の梗塞が起こった場所と起こっていない場所でダメージの差が大きいため、症状が “まだら” にあらわれることがあります。時間帯によっても差があるため、「まだら認知症」と呼ばれることも。

抑うつや怒りの感情が出やすい

脳血管性認知症では、ご本人が症状を自覚しているケースが多いため、不安や焦りの気持ちと関連して、抑うつや怒りの感情が出やすくなります。

また、脳の感情コントロールを司る部分(前頭葉や扁桃体など)で梗塞が起こった場合は、通常よりも喜怒哀楽の感情が激しくあらわれたり、逆に乏しくなったりする症状も見られます。

1日の中で症状が変化しやすい

1日の中でも体調の良し悪しなどによって脳の血流が変化するため、「できること」と「できないこと」が変わるなど、症状の変化が大きくなりやすいのも特徴的。

とくに疲れやすい夕方に症状が強くなったり、夜間に意識レベルが低下して混乱や錯乱状態となる「せん妄」が起こりやすかったりします。

症状の幅が広い

脳血管性認知症では、脳で梗塞が起こった場所によって、認知症症状の他に感覚の麻痺や運動障害、嚥下障害、排尿障害といった症状が多岐に渡ってあらわれるのが特徴的です。

進行の仕方が階段状

脳血管性認知症は、発症時も突然であることが多いですが、進行に関しても、脳梗塞や脳出血といった脳卒中が起こるたびに新たな症状が加わり階段状に状態が悪化していくのが特徴的です。

一方、アルツハイマー型認知症などの変性疾患は、ゆっくりと病態が悪化していくのが特徴的で、このように発症・進行の仕方に違いがあります。

「脳梗塞」は再発防止が重要!

脳血管性認知症の一因ともなっている脳梗塞。認知症の悪化を防ぐためには、新たな脳梗塞を起こさせないことが重要です。

しかし、残念ながら脳梗塞は一度発症すると再発するリスク大。起こってしまった脳梗塞の治療と並行して、再発防止のための対策も重要だといわれています。

脳梗塞の再発予防のために気をつけたいこと

まずは、脳梗塞を再発させないための予防策を「生活習慣の改善・転倒防止・定期検診」の3つの観点から見てみましょう。

● 生活習慣の改善をはかる

もっとも重要なことは、生活習慣の改善を図ることです。脳梗塞は全身の血管の健康に大きく影響されるので、肥満・高血圧・高脂血症・高血糖といったリスク因子を減らしましょう。

具体的には、血栓や動脈硬化を促進する喫煙や飲酒は控え、バランスのよい食事と適度な運動で肥満にならないよう気をつけることが重要です。

● 転倒防止につとめる

脳梗塞では、後遺症として運動障害や感覚麻痺が残ることがありますが、これによって転倒リスクが高まるため、要注意。転倒によって脳内の小さな血管が損傷すると、血液凝固作用が促進されて新たな血栓ができる可能性があります。

また、転倒から骨折、寝たきり状態になることで認知症の症状が進行したり、活動量の低下から全身状態が悪くなって新たな脳梗塞を引き起こしたりすることも考えられます。

脳梗塞後は室内の環境を安全に整え、歩行器を使うなどして転倒を防止しましょう。

● 定期検診を受ける

脳梗塞の中には、症状が軽度で自覚症状があらわれない「隠れ脳梗塞」が存在します。これらを発見するためには、MRIやCT、PETといった詳細な脳検査が欠かせません。

隠れ脳梗塞は基本的に治療の必要はなく、経過観察をしていくにとどまるのが一般的です。しかし、将来的には進行・再発する可能性が高いため、適切な管理と予防策が重要です。

定期的な脳の定期検診を受け、隠れ脳梗塞から大きな梗塞に発展する前に生活習慣を改めましょう。

脳梗塞後は認知症に要注意!

脳梗塞が直接的に認知症の原因にならなかった場合でも、実は後々の認知症のリスクを高めることがあるといわれており、長きに渡って注意が必要です。

そのメカニズムについては研究が進められていますが、一説によると、梗塞によって脳細胞に炎症反応が起こることで、神経変性やタンパク質の異常蓄積などが活性化することがあるのだとか。

これらはアルツハイマー病やピック病などの変性性の疾患とも関連しており、認知機能の低下や認知症の発症を促進する可能性があるといわれています。

脳梗塞の再発と、新たな認知症を予防するためにも、以上の3点には気をつけていきたいですね。

まとめ

脳血管性認知症の原因ともなる脳梗塞。一般的に感覚麻痺や運動障害などの身体症状が注目されることが多いですが、失行や失認といった認知症の症状が後遺症として残るケースも少なくありません。

梗塞が起こっても、目立った身体症状がでない場合もありますので、「いつもと言動が違う」「突然認知症を発症したように感じる」といったときは、迷わず医療機関を受診しましょう。

また、脳梗塞は再発のリスクが高い疾患でもあります。脳梗塞に起因する脳血管性認知症は再発するごとに階段状に悪化していくので、新たな梗塞が起こらないよう、急性期から回復後は生活習慣を改めたり、転倒しないよう室内の環境を整えたりしましょう。

そして、脳梗塞のリスクが急激に上昇する50〜60代以降は、脳の健康診断を行うことが重要です。定期的な脳の検診は「隠れ脳梗塞」を発見するために有効ですので、本格的な症状が出る前に、予防策を取りましょう。

【参考資料】
● 一般社団法人 日本神経学会 『血管性認知症』

「脳梗塞」は認知症の原因に! 症状と予防のポイントをご紹介します

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この記事を書いた人

遠藤紗織のアバター 遠藤紗織 ライター

社会福祉士・介護福祉士の国家資格を保有するWEBライターとして、専門知識を活かした情報発信を得意とします。これまでに数多くの記事を執筆し、福祉分野の深い洞察とリアルな体験をもとに、読者の理解を深め、興味を引く記事作りを心掛けています。誰もが安心して生活できる社会を目指し、情報の提供を通じてその一助となれればと思います。

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