「世界アルツハイマーデー」をきっかけに、認知症への理解を深めよう!

「世界アルツハイマーデー」をきっかけに、認知症への理解を深めよう!
  • URLをコピーしました!

世界で類を見ないほど急激なペースで超高齢社会の道を進むわが国は、高齢者特有の病気も増加の一途を辿っています。とくに「認知症」は年々増加しており、2020年の65歳以上の高齢者の有病率は16.7%。これは、およそ6人に1人にあたる割合です。

らに2025年には最大5人に1人、2060年には最大3人に1人と、まさに日本は ”認知症大国” となることが予想されています。今や、認知症は他人事ではありません。

認知症の当事者もその家族も、前向きに過ごせるような仕組みづくりや、安心して過ごせる社会の構築は、わたしたちが担うべき重要な課題でもあります。

まずは、「認知症」を知ることからはじめてみませんか?

今回は、認知症啓発の大きなムーブメントである「世界アルツハイマーデー」についてご紹介します。制定した経緯や目的、日本での取り組み例など、詳しく見てみましょう。

目次

「世界アルツハイマーデー」ってどんな日?

毎年9月21日は、「世界アルツハイマーデー」です。制定されたのは、1994年。「国際アルツハイマー病協会(ADI)」と「世界保健機関(WHO)」が共同で、同日を「世界アルツハイマーデー」と宣言したことがはじまりです。

この日は、スコットランドのエジンバラで開催された「第10回国際アルツハイマー病協会国際会議」の初日。「世界アルツハイマーデー」をきっかけに認知症が広く周知され、認知症本人や家族への援助や希望の光がもたらされるよう、願いがこめられています。

さらに、同協会は2012年から9月を「世界アルツハイマー月間」と定め、期間中の活動強化を推奨。以来、国内外で様々な活動が盛んに展開されています。

「世界アルツハイマーデー」の目的は?

「世界アルツハイマーデー」の目的は、認知症の人やその家族が住み慣れた地域で安心して生活を続けられるよう、啓蒙活動をとおして社会に働きかけることです。

“アルツハイマー” とありますが、この活動では広く “認知症” を指すとされており、脳梗塞や脳出血などに起因する脳血管性認知症やレビー小体型認知症など、すべての認知症がこの活動の対象となっています。

そして、この活動の対象は「認知症の当事者」だけでなく、「家族」や「地域に暮らす人々」も。つまり、わたしたち誰しもが対象者なのです。

認知症になると、「全て忘れてしまう。何もできなくなってしまう」と思っていませんか?

そんなことはありません。認知症になっても、自分らしく、安心して暮らし慣れた地域で生きていくことができます。

そのためには、周囲の理解が必要不可欠。「世界アルツハイマーデー」は、今まで認知症を知らなかった方にとっても、認知症に対して正しい理解を深めるきっかけとなるでしょう。

今必要なことは、まさに認知症への理解。社会の一員として、認知症の方とその家族に優しい地域づくりを目指していけたらいいですね。

「世界アルツハイマーデー」を主宰しているのは?

「世界アルツハイマーデー」を主宰しているのは、「国際アルツハイマー病協会(Alzheimer’s Disease International / ADI)」です。

こちらの団体は、世界123の国と地域で活動している加盟団体の連合体として、認知症の啓蒙活動と支援活動を行っています。そのビジョンは、「今日の予防、ケア、インクルージョン、そして明日の治癒」。

毎年世界各地で開催される国際会議では、認知症の当事者やその介護者、研究者、医療や福祉の分野で働く人々が一斉に集まり、幅広い視点から認知症分野の発展を目指しています。

一方、日本における加盟団体は、公益社団法人「認知症の人と家族の会(日本アルツハイマー協会)」です。

こちらの団体は1980年、認知症の本人と介護を行う家族、専門職を中心として発足しました。現在は全国各地で啓発リーフレットの配布や講演会の開催など、認知症に優しい社会の実現に向けた活動を行っています。

「世界アルツハイマーデー / 月間」の取り組みをご紹介

「世界アルツハイマーデー / 月間」では、「国際アルツハイマー病協会」や「認知症の人と家族の会」だけでなく、行政や企業、NPO法人、福祉や医療にかかわる団体など幅広い分野で様々な取り組みが行われています。

ここからは、期間中に具体的にどのようなことが行われているのか、見てみましょう。

まずは、行政の取り組みです。認知症施策に関わる省庁は2022年、「世界アルツハイマーデー」を含めた3日間に庁舎をオレンジ色にライトアップしたり、窓ガラスに認知症サポーターのシンボルである「オレンジリング」を掲げたりする「オレンジリングドレスアップ」を行ったそうです。

参加したのは、厚生労働省や経済産業省など全9省庁。「認知症への取り組みは各省庁の領域を超えて行うものである」と再認識できる取り組みだったとのことで、多方面から評価されています。

また、県や市町村では、研修や講座、展示など、厚生労働省のホームページに公開されているだけでも全国で4000を超えるイベントが開催されたとのこと。

このほか、ある社会福祉法人では「認知症の方とそのご家族を支え、見守り、共に生きる地域の輪が、広がっていきますように」と願いを込め、職員が「世界アルツハイマーデー」のシンボルカラーであるオレンジ色のマスクを着用したそうです。

企業でも、講演会やセミナーを開催したり、認知症をテーマとしたテレビCMの放映を実施したりと、認知症啓発の取り組みが盛んです。みなさんもどこかで「世界アルツハイマーデー」の取り組みを目にしたかもしれませんね。

シンボルカラーは「オレンジ」

「世界アルツハイマーデー」は、オレンジ色をシンボルカラーとしています。これは、認知症に関するイベントで使われることの多い「認知症サポーター※1」の目印である「オレンジリング」が由来となっているそうです。

温かみを感じられるオレンジ色は「手助けします」という意思表示であるとも言われており、地域の中で安心して暮らしていけることを目指す「世界アルツハイマーデー」の趣旨にもぴったり。

今後、ますます「認知症=オレンジ」の認識が広まっていくのではないでしょうか。

※1「認知症サポーター」・・・認知症に対する正しい知識と理解を持ち、地域で認知症の当事者やその家族に対して、できる範囲で手助けする “応援者” のことです。

「認知症予防の日」にも注目

認知症関連の日といえば、「世界アルツハイマーデー」以外にも毎年6月14日が「認知症予防の日」とされているのをご存知ですか?

この日は、認知症予防の大切さの周知を目的として、2017年「日本認知症予防学会」によって制定されました。

6月14日はアルツハイマー病を発見したドイツの精神科医、アロイス・アルツハイマー博士(1864〜1915年)の誕生日。制定されてからまだまだ日は浅いものの、認知症への理解を深める社会の動きは今後ますます強まっていくことが期待されますね。

まとめ

認知症の啓発をとおして認知症でも安心して暮らせる社会の仕組みづくりを目指すことを目的とした「世界アルツハイマーデー」。

期間中は「認知症の人と家族の会」を中心として、行政や企業、数多くの団体が一丸となり認知症啓発のために活動します。意識してみると、いたるところで「オレンジ色」を目にできるのではないでしょうか。

「世界アルツハイマーデー」の対象は、認知症の当事者だけでなく、その家族や地域で暮らす全ての人々です。

今まさに認知症に直面している当事者・家族はもちろんのこと、身近に認知症の当事者がいない方も、認知症への理解を深め、今自分にできることを探してみましょう。

「認知症があっても自分らしく、安心して暮らせる」そんな社会を実現できたら、「もしかしたら認知症になるかもしれない」そんな不安も小さくなるのではないでしょうか。

「世界アルツハイマーデー」をきっかけに、認知症への理解を深めよう!

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

遠藤紗織のアバター 遠藤紗織 ライター

社会福祉士・介護福祉士の国家資格を保有するWEBライターとして、専門知識を活かした情報発信を得意とします。これまでに数多くの記事を執筆し、福祉分野の深い洞察とリアルな体験をもとに、読者の理解を深め、興味を引く記事作りを心掛けています。誰もが安心して生活できる社会を目指し、情報の提供を通じてその一助となれればと思います。

目次